デジタルチャネルへのシフトは不可逆的だが、リモート含め人による対応も引き続き重要
経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)は、新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛が本格的に広がるなかで国内の金融サービスの利用意向、利用行動がどう変化したかについて、独自の消費者調査を行いました。コロナ危機により金融サービスの利用意向/行動には明らかな変化が起きており、うち一定部分は危機の収束後も定着し、ニュー・リアリティ(新たな現実)を形成していくであろうことが見て取れます。
事務手続きで銀行店頭を主に利用する意向はコロナ収束後も拡大前の8割、デジタルチャネルの利用意向が急増
5月の調査で銀行関連の事務手続き(口座開設・解約、住所変更など)について、「新型コロナウイルスの感染拡大前/拡大期/収束後に、どのチャネルを主に利用していたか/したいか」を尋ねたところ、「店頭窓口」をあげた回答者は感染拡大前については57%でしたが、拡大期、収束後についてはそれぞれ35%、45%でした(図表1)。収束後に主に店頭を利用する意向は拡大前の約8割程度であり、コロナ危機の収束後も拡大前の水準には戻らないと見込まれます。
一方、オンラインバンキングを主なチャネルのひとつとする回答者は拡大前については41%でしたが、拡大期については50%、収束後では58%に達し、加えてモバイルアプリの利用意向も大きく増加しています。これまでデジタル利用が進んでいなかったシニア層にも、同様の傾向がみられました。
デジタルチャネルのサービス水準には改善の余地あり
一方で、金融機関のデジタルサービスには改善の余地があることも分かりました。ウェブサイトやモバイルアプリに不満を持つ回答者(注1)が多くあげたのが「実施したい手続きがどこでできるのか分かりづらい(ウェブサイト57%)」、「ID、パスワードの設定に手間がかかる/ログイン方法が分かりづらい(ウェブサイト48%、モバイルアプリ43%)」「完結できる手続きがそもそも少ない(モバイルアプリ33%)」などでした。
また、回答者の7%は、コロナ危機をきっかけにメインバンクを変更したか、変更しようと考えています。変更先の銀行を選ぶ基準として、「デジタルチャネルの利便性」をあげた回答者が46%と最も多く、今後選ばれる銀行になるためには利用しやすいデジタルチャネルが必要不可欠であると考えられます。
注1:デジタルサービスに「不満」または「非常に不満」と答えた回答者
キャッシュレス利用が増えたと感じる消費者は約5割
決済の分野でも、不可逆的な変化が起きていると考えられます。回答者の49%は感染拡大後には拡大前に比べてキャッシュレス利用が増えたと感じています。また、今後もキャッシュレス決済を行う意向のある回答者は52%に上りました(図表2)。これに伴い、ATMや店頭での現金の入出金が減ったと答えた人は軒並み2~3割に上ります。
資産運用チャネルもデジタルやリモート重視へ
コロナ危機は金融市場にも大きな影響を与え、資産運用について金融機関に相談したいと考える回答者の割合は感染拡大前後で10%ポイント以上増加しました。コロナウイルス拡大前/拡大後/収束後に利用していた/したい資産運用の取引・相談チャネルについて尋ねたところ、拡大後、収束後では「ウェブサイト」や「モバイルアプリ」の利用意向が高まりました。一方、「店頭での相談」をあげた回答者は、拡大前については31%であったのに対し、収束後については20%でした。コールセンターやビデオ通話など人によるリモートチャネルを志向する人の割合は、拡大前については25%、収束後については32%となり、リモートへと形を変えても、人による対応の重要度は引き続き高いと考えられます(図表3)。
■ 調査レポート
「COVID-19 による顧客行動変化: 金融サービス ボストン コンサルティング グループ 国内消費者調査」
■ 調査の概要
第1回: 2020年3月6日~7日実施(オンライン調査)、回答者数: 3,092名
第2回: 2020年5月27日~28日実施(オンライン調査)、回答者数: 2,060名
■ 日本における担当者
陳 昭蓉 マネージング・ディレクター & パートナー
台湾師範大学数学学科卒業、東京工業大学経営工学専攻博士課程修了(Ph.D)。
台湾松下電器、BCGプラハ・オフィスを経て現在に至る。BCG金融グループ、保険グループ、およびコーポレートファイナンス & ストラテジーグループのコアメンバー。
■ 本件に関するお問い合わせ ボストン コンサルティング グループ マーケティング 直江・嶋津・福井
Tel: 03-6387-7000 / Fax: 03-6387-0333 / Mail: press.relations@bcg.com
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日本では、1966年に世界第2の拠点として東京に、2003年に名古屋、2020年に大阪、京都、2022年には福岡にオフィスを設立しました。