AI活用と組織カルチャーの関連性を理解し、マネジメントすることが戦略構築のカギ
【参考資料】
(本資料は、2021年11月2日に米国で発表されたプレスリリースの抄訳です)
マサチューセッツ州ケンブリッジ発、2021年11月2日 ―― 経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)は、MITスローン・マネジメント・レビュー誌(以下、MIT SMR)と共同でレポート「The Cultural Benefits of Artificial Intelligence in the Enterprise」を発表しました。本レポートは、MIT SMR、BCGのデジタル・アナリティクス領域を専門とする社内組織であるBCG GAMMA、およびBCGの戦略シンクタンクであるBCGヘンダーソン研究所(BCG Henderson Institute)が共同で実施した、AI(人工知能)技術の事業への適用に関する調査(以下、調査)の結果をまとめたものです。この共同調査の実施は5度目です。
AI導入でチームレベルでのカルチャーが改善 目標・行動の見直しにつながり、組織全体にも影響
世界111カ国29業界の企業・組織のマネジャー層へのアンケートの結果、58%がAI導入により効率性と意思決定の質の両方が改善したと答えました。AIを効果的に導入していると考えられるこれらの回答者のうち、75%以上が、士気、協働、組織的学習といったチームレベルでのカルチャーの改善を確認していることが分かりました(図表)。
AIがカルチャーに与える影響は、チームレベルにとどまらず、組織全体におよびます。AIに関する取り組みにより一定以上の財務上の利益(注1)を得ている回答者は、そうでない回答者に比べて、重要業績評価指標(KPI)など、成果の評価方法を見直す可能性が10倍高いことが分かりました。これは、AIの活用によってリーダーが新たな前提条件や目標、パフォーマンスの測定方法や行動パターンを導き出すためだと考えられます。見直された新たな目標を達成するために組織の行動が再編成され、組織全体のカルチャーにも影響を与えます。
「チームのカルチャー・AI活用・組織全体での有効性」の相互作用を理解する
レポートでは、チームのカルチャー、AI活用、組織全体での有効性の3要素は連続し、影響し合っていると指摘し、これを「Culture-Use-Effectiveness(C-U-E)ダイナミクス」として、チームと組織全体が補強し合う関係性を説明しています。AIの活用により一定以上の財務上の利益を得ている組織はわずか11%と、昨年の調査と同様でしたが、一方で一定以上の財務上の利益を得ている組織はC-U-Eダイナミクスを使いこなし始めていると考えられます。こうした企業は、AIを用いて財務上のリターンを得る方法だけでなく、AIをどのようにしてチームのカルチャーに組み込むかということも学んでおり、今回の調査はその両方が一続きの活動であることを示唆しています。
調査結果は、AI活用と組織カルチャーに多面的で強い関連性があることを示しています。AIソリューションが成功すれば、チームと組織の両方のレベルでカルチャーが強化されることが分かりました。同時に、AIを活用するには、企業リーダーがAIソリューションの成功を可能にするようなカルチャーを確立することも重要になります。ますます多くの企業がAIを中心とした戦略を構築しようとしているなか、「チームのカルチャー・AI活用・組織全体での有効性」の相互作用を理解し、マネジメントすることが成功のカギとなります。
AIに対する不信感は導入の効果を弱める
AIを効果的に導入すれば組織カルチャーの改善が期待できますが、そもそもチームのカルチャーがAIツールを容認しなければ、導入は実現しません。調査では、回答者の半数近くが、AIに対する不信感は理解不足(49%)またはトレーニング不足(46%)に起因すると考えていることが分かりました。また、決定の背景となる情報が少なすぎる(34%)、または多すぎる(17%)こともユーザーにとってAIへの信頼を低下させる要因となっています。
ユーザーへの教育によっても改善できない問題としては、データの品質が不十分(31%)、期待に応えられない(20%)、誤ったソリューション(14%)などもAI不信につながると分析しています。レポートでは、AIを用いた利益の創出は従業員によるテクノロジーへの信頼にかかっており、その信頼を築くには、従業員への教育・訓練、AIを推奨する理由の説明、問題を解決するAIツールの提供が必要だと指摘しています。
レポートでは経営幹部らへのインタビューをまじえ、AIをチームレベルで効果的に導入した成功例や、組織全体の行動が見直された事例などを、さまざまな業界にわたり紹介しています。
(注1)「一定以上の財務上の利益」は、組織の規模に応じた閾値により定義。詳細はMIT SMRとの共同レポートの昨年版の日本語訳「組織的学習でAIのインパクトを拡大する」内の「調査について」をご参照ください。
■ 調査レポート
「The Cultural Benefits of Artificial Intelligence in the Enterprise」
■ 調査概要
AIについてのグローバル共同調査2021
■ 日本における担当者
ロマン・ド・ロービエ(Romain de Laubier) マネージング・ディレクター & パートナー
BCG GAMMAの北東アジア地区リーダー。BCG産業財グループのグローバルリーダーシップチーム、およびコーポレートファイナンス&ストラテジーグループのコアメンバー。パリ第9大学経済学部卒業。HEC経営大学院修了。米国の投資銀行、BCGパリ・オフィスを経て、2019年1月よりBCG東京オフィス勤務。
関根 正之 アソシエイト・ディレクター、データサイエンス
BCG GAMMAのメンバー。先進技術活用支援を中心とするコンサルティング業務に従事するとともに、東京大学工学部松尾研究室でAIの研究・開発に携わる。
東京大学理学部卒業。スタンフォード大学経営学修士(MBA)。長銀総合研究所などを経てBCGに入社。
■ 本件に関するお問い合わせ
ボストン コンサルティング グループ マーケティング 直江・福井・天艸
Tel: 03-6387-7000 / Fax: 03-6387-0333 / Mail: press.relations@bcg.com
BCGは、ビジネスや社会のリーダーとともに戦略課題の解決や成長機会の実現に取り組んでいます。BCGは1963年に戦略コンサルティングのパイオニアとして創設されました。今日私たちは、クライアントとの緊密な協働を通じてすべてのステークホルダーに利益をもたらすことをめざす変革アプローチにより、組織力の向上、持続的な競争優位性構築、社会への貢献を後押ししています。
BCGのグローバルで多様性に富むチームは、産業や経営トピックに関する深い専門知識と、現状を問い直し企業変革を促進するためのさまざまな洞察を基にクライアントを支援しています。最先端のマネジメントコンサルティング、テクノロジーとデザイン、デジタルベンチャーなどの機能によりソリューションを提供します。経営トップから現場に至るまで、BCGならではの協働を通じ、組織に大きなインパクトを生み出すとともにより良き社会をつくるお手伝いをしています。
日本では、1966年に世界第2の拠点として東京に、2003年に名古屋、2020年に大阪、京都、2022年には福岡にオフィスを設立しました。