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「イノベーションの準備ができている企業」はわずか3% 2022年の20%から急激に減少~BCG調査

日本企業が直面している課題は「資本コストの上昇」「人材面の制約」

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【参考資料】

(本資料は、2024年6月4日に米国で発表されたプレスリリースの抄訳です)

ボストン発、2024年6月4日 ―― 経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)は、イノベーションに関するレポートの最新版、「Innovation Systems Need a Reboot」(以下、レポート)を発表しました。今年で18回目となるこのレポートは、イノベーションにかかわる世界の経営層1,000人以上を対象に実施した調査結果に基づいています。

イノベーションを重視する企業の割合は過去最多

今回の調査では、イノベーションを自社の優先課題の上位(3位以内)に挙げた企業の割合が83%と、過去最多でした(図表1)。しかしBCG独自の基準で評価[注1]したところ、「イノベーションの準備ができている(持続可能なインパクトをもたらす製品やプロセス、ビジネスモデルのイノベーションを実現するための開発準備を整えている)」と認定された企業はわずか3%で、2022年の20%から急激に減少しています(図表2)。

事業戦略とイノベーション戦略の連携が重要

調査に回答した経営層のうち、「自社は事業戦略とイノベーション戦略を連携させる努力をある程度している」と回答したのは半数未満(48%)で、「緊密に連携させて実際にインパクトを生み出している」と答えたのはわずか12%でした。しかし、イノベーション活動の量(進行中のプロジェクト数)自体に変化は見られず、インパクトを生み出すまでには至らない形式的なプロジェクトが多く行われている現状が明らかになりました。

レポートの共著者で、BCG京都オフィスのマネージング・ディレクター&シニア・パートナー木村 亮示は「戦略が曖昧なまま、ただ形だけのイノベーションに取り組んでいる状況が見受けられます。そうした企業は、イノベーション戦略と事業戦略の結びつきを強化して軌道修正を図ることが重要です」とコメントしています。

自社のイノベーションチームが直面している課題を経営層に尋ねたところ、戦略に関する懸念が最も多く、52%の回答者が「不明確、または具体性に欠ける戦略」を課題の上位に挙げました。その他の懸念としては、「金利の上昇(47%)」「人材面の制約(44%)」が挙がりました。日本企業では、「資本コストの上昇」を挙げた回答者が80%と最多で、「人材面の制約(50%)」がそれに続きました。

「イノベーションの準備ができている企業」は、生成AIの活用でもリード

ほとんどの企業は以前から、従来型の予測AIの活用に取り組んできました。しかし生成AIの台頭により、イノベーションに秀でた企業の多くが、これまでにAIで成し遂げてきたことの“質”の評価を見直さざるを得なくなっているようです。「自社はAIを導入してインパクトを創出した」と答えた経営層の割合は、2022年から2024年にかけて37%から10%に減少しました。

調査に回答した経営層の約9割が、「自社はイノベーション・研究開発・製品開発で生成AIの活用を試している」と答えましたが、その試みの多くはまだ初期段階にとどまっています。「現在、生成AIを大規模に実装している」と回答した経営層はわずか8%でした。「イノベーションの準備ができている企業」は、生成AIの活用についてもリードしています。調査では、「イノベーションの準備ができている企業」は、生成AIを1つ以上のユースケースに導入している可能性が1.5倍高く、大規模に実装している可能性は5倍高いということが明らかになっています。

レポートの共著者で、BCGボストン・オフィスのマネージング・ディレクター&シニア・パートナー、マイケル・リンゲルは「生成AIは効率性を高め、組織に新しい視点をもたらします。それゆえに企業のイノベーション部門をより速く、より良い形で強化することが可能です。しかし組織を導く戦略的な指針がなければ、イノベーション部門がどんなに効率化されても、その能力を十分に発揮するのは難しいでしょう」とコメントしています。

[注1]イノベーションに不可欠な10の要素を評価するBCGの独自指標「イノベーション・トゥ・インパクト(i2i)」を用いた。100点満点中80点以上の企業を「イノベーションの準備ができている」と評価した

■ 調査レポート

Most Innovative Companies 2024: Innovation Systems Need a Reboot

■ 調査概要

世界各国の広範な業種の経営幹部を対象に、自社のイノベーションへの取り組みについて尋ねた調査。初回は2004年に実施し、18回目となる今回は1,000名以上から回答を得ている。調査は2023年11月と2024年1月に実施した。

■ 日本における担当者

木村 亮示 マネージング・ディレクター & シニア・パートナー
BCGコーポレートファイナンス&ストラテジーグループの元グローバルリーダー。テクノロジー・メディア・通信グループ、およびトランスフォーメーショングループのコアメンバー。
京都大学経済学部卒業。HEC経営大学院経営学修士(MBA)。国際協力銀行を経て現在に至る。

■ 本件に関するお問い合わせ

ボストン コンサルティング グループ マーケティング 小川・中林・天艸
Tel: 03-6387-7000 / Fax: 03-6387-0333 / Mail: press.relations@bcg.com

ボストン コンサルティング グループ(BCG)

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日本では、1966年に世界第2の拠点として東京に、2003年に名古屋、2020年に大阪、京都、2022年には福岡にオフィスを設立しました。