日本の家計金融資産は18兆ドル
【参考資料】
(本資料は、2022年6月9日に米国で発表されたプレスリリースの抄訳です)
ボストン発、2022年6月9日 ―― 経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)は、2022年版グローバルウェルス・レポート「 Global Wealth 2022: Standing Still Is Not an Option」(以下、レポート)を発表しました。BCG では、家計資産の規模やウェルスマネジメント(富裕層向け運用サービス)業界の動向をまとめたグローバルレポートを毎年発表しており、今回は22回目となります。
世界の家計金融資産は274兆ドル、日本の家計金融資産は18兆ドル
2021年の世界の家計金融資産は274兆ドルと推計され、不動産等の非金融資産との合計では過去最高の530兆ドル(前年比10.6%増)でした。株式市場の好調なパフォーマンスと、非金融資産への需要の急拡大によるものです。日本の家計金融資産は18兆ドルとなりました。レポートでは、ロシアのウクライナ侵攻がいつまで続くかによる2つのシナリオで2026年の規模を予測しています(図表)。
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インフレやロシアのウクライナ侵攻など地政学的・経済的な不安要素があるにもかかわらず、今後5年間に約80兆ドルの新たな資産が蓄積される可能性があります。レポートでは、すべての地域で家計資産が増加すると予測していますが、特にアジア太平洋地域(日本を除くアジアとオセアニア)は2026年までの年平均成長率(CAGR)が8.4%と最も速いペースで成長すると見込まれ、このままいくと2026年には世界の資産の4分の1近くが集まることになるとみています。
また、業界の大きな変化として、200年以上もの間、最も多額の自国外の富裕層の資産を管理してきたスイスに代わり、2023年には香港がトップとなると著者らは予測しています。
サステナブル投資、暗号資産、パーソナライゼーション、デジタル――業界が取り組むべき領域
レポートでは、富裕層が求める4つの取り組みについて解説しています。
- サステナブル投資:脱炭素を含むサステナブル投資は、従来の投資の3~5倍の速さで成長しており、2026年にはこの領域が個人投資家の資産の8~17%を占めると予想(現在は4~11%)。脱炭素を2050年に向けた長期的な目標と捉えず、直ちに顧客体験に取り入れる必要がある
- 暗号資産:非伝統的なプレーヤーは現在、暗号資産を最大1兆ドル管理しており、暗号資産の時価総額は2030年までに4~5倍に増加する可能性がある。伝統的企業にとっても大きな機会であることは明らかだが、レピュテーションリスクや規制リスクなども考慮し、自社のビジネスに適しているかを判断し、参入するべきか、いつ、どのように参入するべきかを検討するべき
- パーソナライゼーション:顧客への提案やサービスのカスタマイズに優れた企業は、そうでない企業よりも顧客満足度が高く、解約率も低い。これらはCAGR 10%以上の成長につながっている。しかし、パーソナライゼーションは新たなデータと分析を必要とするなど複雑な取り組みであり、顧客のジャーニーにおいて複数のポイントで活用できる要素を優先するといった工夫が必要
- デジタルにおける進化:デジタル・ウェルスマネジメント企業(注1)のバリュエーション・マルチプルは、従来のウェルスマネジャー(注2)の6~7倍であり、2021年には145億ドルの資金(世界の投資額の11%)を獲得している。これらの企業は顧客数を急増させ、低コスト構造や優れたイノベーションを実現しており、従来のプレーヤーもデジタル・ウェルスマネジメント企業の手法を取り入れ、進化する必要がある
レポートの共著者で、BCGチューリッヒ・オフィスのマネージング・ディレクター&パートナー、BCGウェルスマネジメント部門のグローバルリーダーであるAnna Zakrzewskiは「資産の安定的な成長は企業に大きなチャンスをもたらしますが、競争力を維持するためには戦略的な選択をしなければなりません。富裕層の顧客は次世代の、そして次のレベルのサービスを求めており、今日、業界の企業が直面している最も重要な課題は、どの取り組みを優先させるかではなく、それらすべてをどのように実行するかなのです」とコメントしています。
(注1)オンラインプラットフォームにより、デジタルファースト、またはデジタル専用のサービスモデルを展開する企業
(注2)プライベートバンクや、大手金融機関のウェルスマネジメント部門
■ 調査レポート
「 Global Wealth 2022: Standing Still Is Not an Option」
■ 日本における担当者
陳 昭蓉 マネージング・ディレクター & パートナー
BCG金融グループの日本リーダー。保険グループ、コーポレートファイナンス&ストラテジーグループ、マーケティング・営業グループ、およびオペレーショングループのコアメンバー。
台湾師範大学数学学科卒業、東京工業大学経営工学専攻博士課程修了(Ph.D)。台湾松下電器、BCGプラハ・オフィスを経て現在に至る。
栗原 勝芳 マネージング・ディレクター & パートナー
BCGコーポレートファイナンス&ストラテジーグループの日本共同リーダー。金融グループ、および保険グループのコアメンバー。
東京大学経済学部卒業。株式会社大和証券グループ本社、外資系コンサルティングファームを経て現在に至る。
■ 本件に関するお問い合わせ
ボストン コンサルティング グループ マーケティング 直江・福井・天艸
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