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コンテンツ消費の多様化で、地上波から動画配信サービス利用への置き換わりが浮き彫りに ~BCGメディア消費者行動調査

放送事業者は、コンテンツ制作に注力し競争力を高めるか、デジタル流通網の強化を諦めない両輪戦略か、方向性を見極める必要

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経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)は、日本全国の15歳から69歳までのメディア利用者4,400人以上を対象に実施した「メディア消費者行動調査」の調査結果を公表しました。本調査はテレビやOTT(オーバー・ザ・トップ、インターネットを介したコンテンツ配信サービス)を中心に個人のメディア接触時間、利用動機、利用サービス等の変化を長期的に定点観測することを目的とし、今回BCGとして初めて実施しました。

コンテンツ流通はテレビ視聴からOTTへ移行

調査によると、1日当たりの平均利用時間は、60代はテレビ(地上波・衛星放送)を平均2.1時間見るのに対して、10代では1.2時間と半分程度でした。またSVOD(サブスクリプション型動画配信サービス)とAVOD(広告型動画配信サービス)の合計では、60代0.9時間、10代2.3時間と、余暇の過ごし方は年代により異なり、若年層ほどテレビよりOTTを選ぶ割合が高いことが分かります(図表1)。

スポーツはリアルタイム、ドラマはOTT。ユーザーはメディアを使い分ける

カテゴリー別に利用するチャネルを聞いたところ、ドラマの視聴は全年代でOTTを利用する人の割合が高かったのに対して、スポーツはリアルタイムのテレビ視聴をする人が多いことが分かりました(図表2、3)。また、アンケート調査後に詳細調査として行ったインタビューでは、OTTで特別解説を聞きながら、リアルタイムのテレビで高画質・大画面による臨場感を味わいたいという消費者もおり、コンテンツの楽しみ方が多様化・複雑化していることが分かりました。

SVODサービスでは、海外市場と比べて高い解約検討率が今後の課題

米国では、大手のSVODサービスは低い解約検討率を維持していますが、日本市場ではSVODに対するサービス依存度が低く、同一の大手サービスで比較すると日本の解約検討率は米国の3倍以上でした。サービスの業界順位によっても解約意向の変化がみられず、大手でも高い解約検討率を示しているのが日本の消費者の特徴といえます。調査チームは、米国ではケーブルテレビ料金を月額120~150ドル前後で契約することが多いのに対し、日本では地上波で流れる質の高いコンテンツに無料でアクセスできることが背景にあると考えています。

デジタル流通網の強化を諦めない両輪戦略か、コンテンツ制作に注力し競争力を高めるか

放送事業者は、放送の流通環境の変化に直面しており、今後2つの事業方向性を追求する必要があります。1つはデジタル流通網の強化を諦めず、コンテンツプロバイダーとしての地位も維持すること。これにより、変化の激しい放送環境に対応し、視聴者へのコンテンツ提供を確保できます。もう1つは、デジタル流通網からは手を引き、コンテンツ制作に特化すること。競争が激化するなかでも、魅力的なコンテンツを制作し続けられれば、グローバル市場での存在感を高めることができます。

今回の調査を担当したBCG東京オフィスのマネージング・ディレクター&シニア・パートナー、桜井 一正は次のようにコメントしています。「放送事業者は、現状の放送網を維持しつつ、コンテンツ企画・制作における競争力の向上を最優先し、そのうえで、コンテンツプロバイダーとしての成長に注力するか、デジタル配信力向上も加えた両輪を狙うかを経営判断していく必要があります」

■ 調査レポート

第1回メディア消費者行動調査

■ 調査概要

日本全国の15~69歳の男女を対象にインターネットで実施。
アンケート: 回答者4,406人のうち、有効回答があった3,750人
インタビュー: 7人

■ 担当者

桜井 一正 マネージング・ディレクター & シニア・パートナー
BCGテクノロジー・メディア・通信グループの日本リーダー、組織・人材グループ、消費財・流通グループ、および社会貢献グループのコアメンバー。
東京大学文学部卒業。

久保田 一輝 パートナー & アソシエイト・ディレクター
BCGテクノロジー・メディア・通信グループのコアメンバー。
マサチューセッツ大学アマースト校卒業。コロンビア大学経営学修士(MBA)。株式会社アサツーディ・ケイ、アマゾンジャパン合同会社、総合系コンサルティングファームなどを経て現在に至る。

■ 本件に関するお問い合わせ

ボストン コンサルティング グループ マーケティング 小川・小田切・福井
Tel: 03-6387-7000 / Fax: 03-6387-0333 / Mail: press.relations@bcg.com

ボストン コンサルティング グループ(BCG)

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日本では、1966年に世界第2の拠点として東京に、2003年に名古屋、2020年に大阪、京都、2022年には福岡にオフィスを設立しました。