" "

世界資産運用市場: 2022年末の運用資産残高は98兆ドル、前年比10%減 日本は5.4兆ドル、2%減~BCG調査

マクロ経済の向かい風のなか、収益構造の変革やパーソナライゼーションがカギに

印刷用のPDFはこちら

【参考資料】

(本資料は、2023年5月15日に米国で発表されたプレスリリースの抄訳です)

ボストン発、2023年5月15日 ―― 経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)は、グローバルアセットマネジメント・レポートの2023年版「Global Asset Management 2023: The Tide Has Turned」(以下、レポート)を発表しました。BCGは資産運用市場と運用会社の動向についてまとめたレポートを毎年発行しており、今回で21回目になります。

2022年末の世界の運用資産残高は前年比10%減の98兆ドル、日本は2%減

2022年末の運用資産残高は98兆ドルと推計され、2021年(108兆ドル)からの減少幅は2005年以降で2番目の大きさとなる10%でした(図表)。金利の上昇により、債券価格や株価が急落したことによるものです。日本における運用資産残高は2%減、5.4兆ドルでした。世界全体の新規流入資金は年初の運用資産残高の1.6%と推計され、2018年以来初めて3%を下回りました。

手数料が低下し、収益を圧迫 革新的な商品の開発にも苦戦

過去10~15年間は、市場のパフォーマンスは驚異的で、収益の伸びに対する手数料の引き下げ圧力を相殺する以上の力強さがありましたが、そのような時代は終わったと考えられます。パッシブ商品だけでなく、似たような商品が乱立するアクティブ商品においても手数料が差別化要因となっており、持続的な引き下げ圧力がかかっています。平均手数料は2015年以降15%以上低下しており、これにより550億ドル分の収益(2022年の運用資産残高で試算)が失われる計算です。収益圧迫に拍車をかけているのは、現在の環境にそぐわないコスト構造だといえます。

また、業界では差別化を図るためにさまざまな商品が生み出されていますが、それらは革新的なものには至っていません。投資家は信頼できる実績を持つ商品に関心を強めており、投資信託とETF(上場投資信託)の世界の運用資産残高の75%が10年以上前に生まれた商品です。一方、10年前に発売された商品のうち、現在も提供されているものは40%未満です。

今後の最重要課題は収益性の向上、プライベート市場への参入、パーソナライゼーション

資産運用会社が直面しているこれらのプレッシャーは今後も続く一方で、市場の急激な回復は期待できません。レポートでは、現在の延長線上では収益の年平均成長率(CAGR)は5%と、近年の平均である10%から大きく落ち込むと予想しています。過去の水準に戻すには、20%のコスト削減と、少なくとも30%の収入を収益性の高い商品から生み出すような収益構造の転換が必要です。レポートでは、今後の最重要課題として以下の3つのテーマについて解説しています。

  • 収益性: 資産運用会社は、収益性へのアプローチを変革する必要がある。そのためには、各機能におけるコストとその要因を把握し、単に経費を削減するだけでなく、複数の取り組みによりコストを最適化すべき
  • プライベート市場: プライベート市場を含む高成長中のオルタナティブ投資[注1]の機会を追求すべきである。オルタナティブ投資は2022年末時点で世界の運用資産残高が20兆ドル以上に達する。2022年にオルタナティブ資産による収益は業界全体の収益の半分を占め、この分野の商品を提供する企業に1,900億ドル以上の収益をもたらしている。今後5年間のオルタナティブ資産の運用残高の年平均成長率は7%に及ぶと予想される
  • パーソナライゼーション: 高度にパーソナライズされた顧客体験や商品を可能にするテクノロジーを活用すべき。新しいテクノロジーは、営業やマーケティングプロセスにおけるパーソナライゼーションの効率と効果を高め、従来のアプローチと比較して販売コンバージョン率を約20%増加させる可能性がある

レポートの共著者で、BCGニューヨーク・オフィスのマネージング・ディレクター&パートナー、Chris McIntyreは次のようにコメントしています。「資産運用業界は転換期を迎えており、過去のような収益成長を取り戻すためには、経営リーダーが組織の運営方法を見直す必要があります。市場は不確実性に満ちており、テクノロジーにより顧客にサービスを提供する方法は急速に変化しています」

[注1]ヘッジファンド、未公開株、不動産、インフラストラクチャ、コモディティ、プライベート・デットなど

■ 調査レポート

Global Asset Management 2023: The Tide Has Turned

■ 日本における担当者

栗原 勝芳 マネージング・ディレクター & パートナー
BCGコーポレートファイナンス&ストラテジーグループの日本共同リーダー。金融グループ、および保険グループのコアメンバー。
東京大学経済学部卒業。株式会社大和証券グループ本社、外資系コンサルティングファームを経て現在に至る。

■ 本件に関するお問い合わせ

ボストン コンサルティング グループ マーケティング 小川・福井・天艸
Tel: 03-6387-7000 / Fax: 03-6387-0333 / Mail: press.relations@bcg.com

ボストン コンサルティング グループ(BCG)

BCGは、ビジネスや社会のリーダーとともに戦略課題の解決や成長機会の実現に取り組んでいます。BCGは1963年に戦略コンサルティングのパイオニアとして創設されました。今日私たちは、クライアントとの緊密な協働を通じてすべてのステークホルダーに利益をもたらすことをめざす変革アプローチにより、組織力の向上、持続的な競争優位性構築、社会への貢献を後押ししています。

BCGのグローバルで多様性に富むチームは、産業や経営トピックに関する深い専門知識と、現状を問い直し企業変革を促進するためのさまざまな洞察を基にクライアントを支援しています。最先端のマネジメントコンサルティング、テクノロジーとデザイン、デジタルベンチャーなどの機能によりソリューションを提供します。経営トップから現場に至るまで、BCGならではの協働を通じ、組織に大きなインパクトを生み出すとともにより良き社会をつくるお手伝いをしています。

日本では、1966年に世界第2の拠点として東京に、2003年に名古屋、2020年に大阪、京都、2022年には福岡にオフィスを設立しました。