世界の食料システム強靭化には、あらゆるセクターが連携し、役割を果たすことが必要
【参考資料】
(本資料は、2022年5月17日に米国で発表されたプレスリリースの抄訳です)
ボストン発、2022年5月17日 ―― 経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)は、ロシアによるウクライナ侵攻が引き起こす食料危機に対応し、世界の食料システムを強靭化するための解決策を提示したレポート「The War in Ukraine and the Rush to Feed the World」を発表しました。
17億人が食料危機による影響を受ける見通し
国連の「食料、エネルギー、資金に関するグローバル危機対応グループ」によると、17億人が深刻な食料不安、エネルギー価格の上昇、債務負担の増大に苦しむ可能性があり、そのほとんどは発展途上国の人々です。国際食糧政策研究所(IFPRI)によれば、ロシアとウクライナからの輸出を合計すると、世界で取引される食料のカロリーの約12%を占め、ロシアとウクライナは小麦(世界の28%)やひまわり油(69%)など主要な食料の重要な輸出国でもあります。国連世界食糧計画(WFP)は、世界中に配給する小麦の半分をウクライナから購入しており、また、ロシアやウクライナからの輸出が減少するにつれ、他の主要輸出国の中には、自国の食料の備蓄を保護するために輸出の禁止や制限を発表している国もあります。
食料だけでなく、肥料や燃料など、ロシアが長年にわたって供給してきた重要な農業資材の価格も高騰しています。世界人口の約半数は肥料を使った食料生産に依存しており、肥料の供給が滞れば、直ちに供給量を増やす措置を取らない限り、最大で4年間、深刻な影響を与える可能性があります。さらに、肥料のサプライチェーンが分断された場合の影響は世界中の消費者に及びます。 ウクライナ危機が燃料価格に与える影響も深刻です。農作業に必要な燃料費はもちろん、多くの発展途上国では内陸部への輸送にかかるコストが食料価格の4割を占めており、燃料価格が上がれば、その分食料価格が上がるという悪循環に陥っています。
また、今回の危機は、世界中の多くの発展途上国が高い債務水準に陥っているタイミングと重なります。国際通貨基金(IMF)によると、新型コロナウイルスのパンデミックに対処するための公的支出が主な原因で、低所得国の約60%が現在、債務危機にあるか、そのリスクが高い状態にあります(2015年は30%)。
影響を緩和するためには、それぞれのステークホルダーが連携して役割を果たす必要
危機を緩和するために最も重要なことは、政府、国際機関、金融機関、NGO、民間企業など、すべてのステークホルダーが協力して緊急の人道支援に取り組むことです。食料や資金の援助だけでなく、国内の農地の持続可能な集約化や代替作物の栽培のために必要な種子、農業資材、ツール、技術を提供することが求められます。レポートでは、各ステークホルダーに対する30の提言からなる解決策について解説しています(図表)。
レポートの共著者で、Food Systems for the Futureの創業者兼CEOのErtharin Cousinは「この危機は世界中の人々に重大な影響を与えますが、特に低所得国の経済は大きなダメージを受ける可能性があり、潜在的に不安を抱えています」と述べています。
レポートの共著者で、BCGシカゴ・オフィスのマネージング・ディレクター&パートナー、社会貢献グループにおける食料と自然のトピックのグローバルリーダーを務めるShalini Unnikrishnanは次のようにコメントしています。「今回の危機について、個々の構成要素をめぐって多くの議論が行われていますが、食料、肥料、燃料の価格上昇、限界まで膨れ上がった債務、気候変動に関する課題、世界各地で進行中の紛争、そしてパンデミックと、様々な要因が相互に影響していることを認識し、総合的に捉えることが重要です」
■ 調査レポート
「The War in Ukraine and the Rush to Feed the World」
■ 日本における担当者
折茂 美保 マネージング・ディレクター & パートナー
BCG社会貢献グループの日本リーダー。
パブリックセクターグループ、およびハイテク・メディア・通信グループのコアメンバー。東京大学経済学部卒業。同大学院学際情報学府修士。スタンフォード大学経営学修士(MBA)。
■ Food Systems for the Futureについて
Food Systems for the Future (FSF)は、市場主導型のアグテック、フードテック、革新的なビジネスをバリューチェーン全体で促進、実現、拡大し、十分なサービスを受けていない低所得層のコミュニティの栄養状態を改善することを目的に設立されました。FSFは、融資、ビジネス促進、公共政策と教育、パートナーシップとコミュニティへの関与、栄養に関する専門知識といった中核サービスを通じて、企業への包括的支援と幅広いエコシステムの構築により、健康的で栄養価の高い食品の価格や入手方法、認知度に対する課題を解決しています。FSFは現在、米国とサハラ砂漠以南のアフリカで事業を展開しています。詳しくは、fsfinstitute.netをご覧ください。
■ 本件に関するお問い合わせ
ボストン コンサルティング グループ マーケティング 直江・福井・天艸
Tel: 03-6387-7000 / Fax: 03-6387-0333 / Mail: press.relations@bcg.com
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日本では、1966年に世界第2の拠点として東京に、2003年に名古屋、2020年に大阪、京都、2022年には福岡にオフィスを設立しました。