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SDVは、2030年までに自動車業界に6,500億ドル以上の価値をもたらす可能性。産業横断の協業が変革のカギに~BCG、WEF共同レポート

車載ソフトウェアと電子機器によるOEMの収益は3倍、サプライヤーの市場規模は倍増

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【参考資料】

(本資料は、2023年9月7日に米国で発表されたプレスリリースの抄訳です)

ボストン発、2023年9月7日 ―― 経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)は、世界経済フォーラム(WEF)と共同で、ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)に関するレポート「Rewriting the Rules of Software-Defined Vehicles」(以下、レポート)を発表しました。ハードウェアに依存した従来の自動車から、ソフトウェアを中心に開発されるSDVへの移行が進むことで創出される価値を分析するとともに、自動車業界のリーダーに向けた5つのインサイトを提示しています。

自動車産業とハイテク産業の融合が進む自動車業界

自動車業界では、自動車産業とハイテク産業の融合が急速に進み、2つの大きな変革が起きつつあります。内燃機関(ICE)車から電気自動車(EV)への移行、そしてハードウェア依存の自動車からSDVへの移行です。レポートでは、新興しつつあるSDV領域が今後10年で進化を続け、2030年までに自動車業界に6,500億ドル以上の価値[注1]を生み出すと予測しています。これは、世界の自動車関連の市場規模の15~20%に相当する見込みです。さらに、車載ソフトウェアと電子機器による自動車メーカー(OEM)の収益は、現在から2030年までに870億ドルから2,480億ドルへと約3倍に成長、車載ソフトウェアと電子機器のサプライヤーの市場規模は、2,360億ドルから4,110億ドルへと約2倍に拡大すると分析しています。

SDVによる変革の推進には産業横断の協業が不可欠

企業の多くはこれまで、独占的な立場を築くべく個別のソリューションを独自に開発しようとしていたため、パートナーシップの締結は限られていました。しかし、技術的複雑性やエコシステムがもたらす恩恵を考慮すると、今後はパートナーシップの締結や産業横断のコラボレーション(協業)が不可欠になると考えられます。それによって、規模を拡大したり、安全性を向上させたり、顧客の要求に応えたりすることが可能になります。

レポートでは、SDVへの移行という変革をさらに推進するために、自動車業界のプレーヤーに向けた5つのインサイトを提示しています。

  1. SDVへの変革はその動きの複雑さゆえに難易度が高いが、スケールメリットを再び享受するうえで産業横断のコラボレーションが重要な役割を果たす
  2. コラボレーションは、SDVに関連する部品、特徴、機能など、技術スタックの分類を産業横断で共有するところから始める必要がある
  3. 相互運用可能なプラットフォーム開発を進めることで、産業横断のコラボレーションが可能になり、自動車業界の収益性も高まる
  4. イノベーションの速度、ユーザーの特徴、規制は地域ごとに異なるため、各地域の特性にあわせたコラボレーションが求められる
  5. パートナーシップを重視する世界で成功するためには、組織内外のコラボレーションに必要な影響力を、オペレーティングモデルに根差したかたちで構築する必要がある

インサイト2の観点で、WEFとBCGが立ち上げたイニシアチブ「Automotive in the Software-Driven Era initiative」では、SDVを構成する6層の技術モデルを打ち立てました(図表1は低層から上層にかけて各層の働きを例示)。イニシアチブには、自動車、新型モビリティ、ハイテク産業の大手30社以上が参加しています。このモデルは今後の開発やコラボレーションの際に、技術スタックへの理解を共有するうえで役立つと考えられます。

BCGチューリッヒ・オフィスのマネージング・ディレクター&シニア・パートナーであり、自動車テクノロジービジネスに関するグローバルリーダーを務めるAlex Kosterは次のようにコメントしています。「SDVがもたらす変化は非常に大きなものです。ソフトウェアは、製品の中核となる競争優位性の源泉、イノベーションを実現する方法と速度、自動車製造における企業や業界全体の役割、そしてエンドユーザーとの関係を一変させます。SDVと、先進運転支援などの重要機能を実現するには、自動車企業とテクノロジー企業の“DNA”を組み合わせることが、これまで以上に求められます。新たな事業環境下で両産業の適切な役割を見極めることで、今この取り組みを始めることが何より重要です」

[注1]サプライヤー市場、および消費者市場を含めた、世界の車載ソフトウェア・電子機器市場に生じる価値を収益ベースで推計

■ 調査レポート

Rewriting the Rules of Software-Defined Vehicles

■ 日本における担当者

滝澤 琢 マネージング・ディレクター & パートナー
BCG産業財・自動車グループ、マーケティング・営業・プライシンググループ、グローバル化戦略グループのコアメンバー。自動車セクターの日本リーダー。
東京大学法学部卒業。トヨタ自動車株式会社を経て現在に至る。

■ 世界経済フォーラム(WEF)について

The World Economic Forum, committed to improving the state of the world, is the International Organization for Public-Private Cooperation. The Forum engages the foremost political, business, and other leaders of society to shape global, regional, and industry agendas. (www.weforum.org)

■ 本件に関するお問い合わせ

ボストン コンサルティング グループ マーケティング 小川・小田切・天艸
Tel: 03-6387-7000 / Fax: 03-6387-0333 / Mail: press.relations@bcg.com

ボストン コンサルティング グループ(BCG)

BCGは、ビジネスや社会のリーダーとともに戦略課題の解決や成長機会の実現に取り組んでいます。BCGは1963年に戦略コンサルティングのパイオニアとして創設されました。今日私たちは、クライアントとの緊密な協働を通じてすべてのステークホルダーに利益をもたらすことをめざす変革アプローチにより、組織力の向上、持続的な競争優位性構築、社会への貢献を後押ししています。

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日本では、1966年に世界第2の拠点として東京に、2003年に名古屋、2020年に大阪、京都、2022年には福岡にオフィスを設立しました。