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2022年までの5年間における価値創造に優れた日本企業のランキングを発表~BCG調査

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経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)は、日本企業を対象とした、過去5年間の価値創造についての調査レポート「日本企業の価値創造とESG――日本版バリュークリエーターズ・ランキング2023」(以下、レポート)を発表しました。レポートでは2021年、2022年に続き、5年間のTSR(株主総利回り)を基に世界の各地域との比較、国内の業種別の比較、個別企業のランキング、という3つの切り口で日本企業の価値創造を分析しました。後半ではESGへの取り組みをどう価値創造につなげるかについて考察しています。

2022年、日本企業のTSRは-5%と海外と比べ底堅い一方、5年間のTSRは昨年に続き低水準

TOPIX(東証株価指数)と米国、欧州、新興国の同等の指標を用いて各地域の企業の年平均TSRの水準を比較したところ、日本企業のTSRは2022年単年では-5%と、2桁のマイナスとなった米国、新興国などの他地域に比べ下落幅は限定的でした。しかし、2022年までの5年間のTSRは約1%と、昨年に続き米国(9%)、欧州(5%)、新興国(3%)を含む対象4地域で最も低水準でした(図表1)。

また、業種別の分析では昨年に続き「ITソリューション」「半導体」が上位を占めたほか、安定した事業環境を背景に、配当や自社株買いで株主に着実に還元している「通信」「保険」、またコロナ禍後の消費回復期待によりマルチプルが上昇した「アパレル」などが上位を占めました。

価値創造に優れた日本企業のランキングの顔ぶれ

時価総額1兆円以上の大型企業を対象としたランキング[注1](図表2)では、3年連続で半導体検査装置のレーザーテックが首位となりました(5年間の年平均TSRは74%)。昨年に引き続き「ITソリューション」「半導体」「サービス」業界の企業が多くランクインしたほか、コロナによるコンテナ運賃の急騰によりコンテナ船事業の収益が改善した海運企業、資源高の影響を受けた総合商社など、マクロ環境の追い風を受けた企業もランクインしました。

ESGを企業価値創造につなげるための3つのポイント

ESG重視への流れは、短期的な揺り戻しはありつつも中長期的には継続するものと考えられます。企業価値の側面で重要なポイントは、資本市場や機関投資家のESG重視の姿勢です。ESG投資の運用資産残高(AUM)は2030年までに全運用資産残高の8割超に達すると予測され、投資意思決定にESGの要素を組み込む運用機関も増えています。レポートでは、ESGへの取り組みを企業価値につなげるためには、①ESGを経営アジェンダと位置づけ、②事業戦略に組み込んだうえで、③財務的なインパクトやリターンと紐づけて投資家に訴えることが重要だと考察しています。

グローバル調査では25年間の長期的価値創造に優れた企業に着目

BCGは1999年から毎年、世界の企業を対象にバリュークリエーターズ・ランキングを発表してきました。25周年にあたる今年は、5月5日に25年間にわたる長期的な価値創造に優れた企業のランキング、およびそうした企業の特徴を分析したレポートを発表しました。ランキングには、日本からファーストリテイリングが6位にランクインしています。

[注1]ランキングの対象は、2021年、2022年は時価総額5,000億円以上の企業、2023年版より時価総額1兆円以上の企業に変更している

■ 調査レポート

日本企業の価値創造とESG――日本版バリュークリエーターズ・ランキング2023

■ 調査概要

TSR(トータル・シェアホルダー・リターン、株主総利回り)とは、企業価値創造の測定指標です。一定期間における配当と株価の値上がりの総利回りで、株主にとっての投資収益性を示します。本調査は日本企業673社を対象に2018~2022年の5年間における年平均TSRを算出・分析しました。BCGでは1999年より25年にわたりグローバル規模で同種の調査を継続して行っています。調査の詳細や過去のレポート、グローバルランキングについてはこちらをご覧ください。

■ 担当者

加来 一郎 マネージング・ディレクター & シニア・パートナー
BCGプリンシパル・インベスター&プライベート・エクイティグループのアジア・パシフィック地区リーダー。同コーポレートファイナンス&ストラテジーグループなどのコアメンバー。慶應義塾大学卒業。住友商事株式会社、外資系コンサルティングファーム、PEファンドを経て現在に至る。

坂上 隆二 パートナー & アソシエイト・ディレクター
BCGコーポレートファイナンス&ストラテジーグループ、およびプリンシパル・インベスター&プライベート・エクイティグループのコアメンバー。京都大学法学部卒業、パリ第2大学大学院国際関係修士、フランス国立行政学院(ENA)国際行政課程修了。外務省を経て現在に至る。

■ 本件に関するお問い合わせ

ボストン コンサルティング グループ マーケティング 小川・嶋津
Tel: 03-6387-7000 / Fax: 03-6387-0333 / Mail: press.relations@bcg.com

ボストン コンサルティング グループ(BCG)

BCGは、ビジネスや社会のリーダーとともに戦略課題の解決や成長機会の実現に取り組んでいます。BCGは1963年に戦略コンサルティングのパイオニアとして創設されました。今日私たちは、クライアントとの緊密な協働を通じてすべてのステークホルダーに利益をもたらすことをめざす変革アプローチにより、組織力の向上、持続的な競争優位性構築、社会への貢献を後押ししています。

BCGのグローバルで多様性に富むチームは、産業や経営トピックに関する深い専門知識と、現状を問い直し企業変革を促進するためのさまざまな洞察を基にクライアントを支援しています。最先端のマネジメントコンサルティング、テクノロジーとデザイン、デジタルベンチャーなどの機能によりソリューションを提供します。経営トップから現場に至るまで、BCGならではの協働を通じ、組織に大きなインパクトを生み出すとともにより良き社会をつくるお手伝いをしています。

日本では、1966年に世界第2の拠点として東京に、2003年に名古屋、2020年に大阪、京都、2022年には福岡にオフィスを設立しました。