The 2021 M&A Report

世界のM&A市場は回復傾向、2021年上半期の取引総額は前年同期の2倍を上回る~BCG調査

M&Aを取り巻く環境は引き続き良好な見通し、カーブアウトの成功には入念な準備を

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(本資料はドイツで発表された報道資料の抄訳です)

ミュンヘン発、2021年10月20日 ―― 経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)は、パーダーボルン大学のSönke Sievers教授と共同で調査を行った2021年版M&Aレポート「The 2021 M&A Report: Mastering the Art of Breaking Up」(以下、レポート)を発表しました。18回目となる今回のレポートでは、1980年1月~2021年6月に公表された84万件以上のM&A案件を記録したBCGのデータベースに基づいて分析しています。

新型コロナウイルス危機の影響で落ち込んだ取引総額、案件数は2021年に大きく回復

2020年のM&A市場はコロナ危機の影響を受け、案件数は前年比で8.3%減少し、取引総額ベースでは前年比13.2%減の約2.5兆ドルと、過去6年の平均を下回りました(図表)。しかし下半期には、テクノロジーとヘルスケア分野の複数のメガディール(取引価額100億ドル以上)により取引総額が増加。経済回復と景況感の向上を背景に、2021年上半期に入ると取引総額は前年同期比136%増と前年の2倍を上回る大幅な拡大を見せました。案件数も前年同期比で32%増加しています。けん引役となった北米では、2021年上半期の取引総額は上半期としては過去最高を記録しました。

レポートでは、経済活動の活発化や、プライベートエクイティやベンチャーキャピタルが記録的な水準のドライパウダー(ファンドの手元にある待機資金)を有していることなど、M&Aの買い手側が豊富な資金を持っていることを要因に挙げ、M&Aを取り巻く環境は引き続き良好に推移すると予測しています。これに伴い、大型の買収対象を求めて市場に参入する特別目的買収会社(SPAC)も増加しています。

レポートの共著者でM&Aトピックのグローバルリーダーを務めるBCGミュンヘン・オフィスのマネージング・ディレクター & シニア・パートナー、Jens Kengelbachは次のようにコメントしています。「2021年上半期のM&A市場は2007年や2001年に匹敵する過去10年間で最高の水準であり、この傾向は下半期も維持されるでしょう。現在の堅調な市場が続くような好ましいトレンドが組み合わさっており、売り手側にとっては、M&Aで大きな価値を獲得するための機が熟しているといえます」

事業売却が大きな価値を生む

企業がコロナ危機の影響に対処するうえで、資金調達やポートフォリオの最適化などさまざまな目的を達成するために、事業売却は引き続き重要な手段となります。レポートでは、事業売却が企業にもたらす価値を判断するため、株価への影響をはかるM&A公表日前後7日間の累積超過収益率(CAR)と、事業売却から2年間の相対TSR(注1)(株主総利回り)を分析しています。2020年から2021年にかけての売却側のCARの中央値は0.7%と、2000年代で最も高い値となりました。ここ数年はマイナスになることが多かった買収側のCARも、2021年上半期にはプラスに転じています。売却側企業の相対TSRは、公表された案件で2014年には1.5%、2019年には4%と上昇しています。このことから、レポートでは、ポートフォリオの定期的な組み換えや、非中核資産の売却によって、株主に大きな価値をもたらすことができると指摘しています。

カーブアウトには事前準備が重要

カーブアウト(大企業からの一部事業の切り出し)は事業売却の前段階で必要なステップですが、複雑化しがちでコストもかさむ場合があります。レポートによると、3億ドル以上のカーブアウトの50%以上が、TSA(移行期間のサービス提供契約)などの形で旧親会社からの長期的な支援を必要としています。カーブアウトが失敗する上位3つの理由としては、不明確な戦略設計、キャパシティの制約と重要な人材の喪失、売却側の事業計画と買収側の統合ニーズの不一致が挙げられます。

レポートの共著者でBCGケルン・オフィスのマネージング・ディレクター & パートナー、Georg Keienburgは「特に、現在のような良好な環境下では、旧親会社と深く統合されていた資産が市場に出回るケースが増えています」とコメントしています。「このようなカーブアウトを成功させるためには、事業の切り出しに充てる予算、将来の目標となるオペレーションモデル、価値創造へのロードマップなどの明確なガイダンスを含め、入念な事前準備が必要なのです」

(注1)Relative Total Shareholder Return: 当該企業の属する業界のセクターインデックスと比較したTSR

■ 調査レポート

The 2021 M&A Report: Mastering the Art of Breaking Up

■ 日本における担当者

加来 一郎 マネージング・ディレクター & シニア・パートナー
BCGプリンシパルインベスター&プライベートエクイティグループのアジア・パシフィック地区リーダー、およびコーポレート・ファイナンス&ストラテジーグループのコアメンバー。
慶應義塾大学経済学部卒業。住友商事株式会社、外資系コンサルティングファーム、PEファンドを経て現在に至る。

■ 本件に関するお問い合わせ

ボストン コンサルティング グループ マーケティング 直江・福井・天艸
Tel: 03-6387-7000 / Fax: 03-6387-0333 / Mail: press.relations@bcg.com

ボストン コンサルティング グループ(BCG)

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日本では、1966年に世界第2の拠点として東京に、2003年に名古屋、2020年に大阪、京都、2022年には福岡にオフィスを設立しました。