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過去5年間に目標に沿って温室効果ガス排出量を削減した世界の企業はわずか14%にとどまる ~BCG調査

2022年の前回調査から3%ポイント減少、排出量削減にはAIやデジタル活用がカギ

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【参考資料】

(本資料は、2023年11月16日に米国で発表されたプレスリリースの抄訳です)

ボストン発、2023年11月16日 ―― 経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)は、11月30日に開幕する第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)を前に、CO2 AI[注1]と共同で、企業の温室効果ガス排出量の測定・削減に関する調査の最新版「Why Some Companies Are Ahead in the Race to Net Zero」を発表しました。3回目となる今回の調査は、日本を含む世界23カ国、18の産業にわたり、従業員1,000人以上、売上高1億~100億ドル超の企業で排出量の測定・削減に携わる経営層約1,850人を対象に実施しました。

排出量全体の測定・削減の取り組みは前回調査から進捗がみられない

気候変動への懸念が世界的に高まっているにもかかわらず、スコープ1・2・3[注2]排出量全体を網羅的に測定している企業は、前回調査同様10%にとどまりました。過去5年間に自社の排出削減目標に沿って削減(目標の75%以上を達成)した企業もわずか14%と、前回から3%ポイント減少しました。

削減の取り組みが進まない背景には、マクロ経済の動向や資金の制約があります。

しかし、脱炭素化を進めている企業は、経済的な利益と非経済的な利益の両方を実現していることもわかっています。調査に回答した企業の40%が、排出量削減により年間1億ドル以上の経済的利益を見込んでおり、この割合は前回調査から3%ポイント増加しました。非経済的な利益としては、レピュテーション向上、営業コスト削減、規制順守などが挙げられています。

注1:AIを活用して 排出量を正確に把握するデジタルソリューションのリーディングカンパニー。BCGが2020年に開発し、2023年にパリを本拠とする独立企業としてスピンオフ(分離・独立)した
注2:スコープ1: 自社の直接排出量。スコープ2: 自社の間接排出量。スコープ3: 自社の事業活動に関連する他社の排出量、取引先などサプライチェーン全体の排出量

スコープ3排出量の測定は改善、半数以上が部分的に測定

全体の排出量の測定・削減には進捗がみられなかった一方で、スコープ3排出量の測定については大きな改善がみられました。スコープ3排出量を部分的に測定および開示していると回答した企業は53%と、2021年調査から19%ポイント増加しました(図表2)。また、スコープ3の削減目標を設定していると回答した企業も35%と2021年調査から12%ポイント増加しました。

目標に沿って排出量を削減する企業の4つの特徴

排出削減目標の75%以上を達成している企業には、4つの特徴があることが分かりました。

  • サプライヤーや顧客との協力: 75%が大多数のサプライヤーと共同で削減に関する取り組みを行っていると回答、54%が大多数の顧客と取り組みを行っていると回答した
  • 製品レベルでの排出量計算: 75%の企業が、少なくとも一部の製品について原材料から出荷までの排出量を計算することを試みている
  • 排出量管理プロセスにおけるデジタル技術の活用: 自動化されたデジタルソリューションを排出量の測定に導入している企業は、排出量を網羅的に測定している割合が約2.5倍高い(図表3)。また、デジタルテクノロジーは排出量管理の精度・効率、意思決定を向上させる。目標に沿って排出量を削減している30%の企業が、今後3年以内にAIを活用したツールの導入を拡大する予定
  • 規制を肯定的に捉える: 排出量報告に関するルールについて、排出量削減を可能にする重要な手段であると考える傾向が2倍高い

レポートの共著者で、BCGでCO2 AIの開発を率いたのち現在はCO2 AIのCEOを務めるCharlotte Degotは次のようにコメントしています。「削減目標と、現実の具体的な効果との間の溝を埋めるうえで、企業にとってテクノロジーとAIの力はますます大きくなっています。目標通り排出量を削減している企業のベストプラクティスを拡大するために、今すぐ動くべきです」

■ 調査レポート

Why Some Companies Are Ahead in the Race to Net Zero

■ 日本における担当者

ロマン・ド・ロービエ マネージング・ディレクター & シニア・パートナー
BCGのデジタル専門家集団BCG Xアジア・パシフィック地区リーダー兼北東アジア地区の共同リーダー。BCG産業財グループのグローバルリーダーシップチーム、およびコーポレートファイナンス&ストラテジーグループのコアメンバー。
パリ第9大学経済学部卒業。HEC経営大学院修了。米国の投資銀行、BCGパリ・オフィスを経て現在に至る。

丹羽 恵久 マネージング・ディレクター & シニア・パートナー
BCG気候変動・サステナビリティグループ、パブリックセクターグループの日本リーダー。BCGテクノロジー・メディア・通信グループ、社会貢献グループ、および組織・人材グループのコアメンバー。
慶應義塾大学経済学部卒業。国際協力銀行、欧州系コンサルティングファームを経て現在に至る。

渡辺 英徳 パートナー
BCGのデジタル専門家集団BCG Xに所属。 BCGエネルギーグループ、および産業財・自動車グループのコアメンバー。
東京大学理学部卒業。同大学大学院理学系研究科物理学専攻理学博士。慶應義塾大学理工学部数理科学科で特別研究助教として勤務した後、グローバルコンサルティングファームを経て現在に至る。

■ CO2 AIについて

CO2 AIは、大規模で複雑な組織がサステナビリティの目標を達成するために、エンドツーエンドで排出量管理を実現するソリューションのリーディングカンパニーです。正確かつ効率的にカーボンフットプリントを測定し、脱炭素の取り組みを実行し、規制に準拠して排出量を報告するための、AIを活用したソフトウェアスイートを提供します。
BCGが2020年に開発したCO2 AIは、2023年にパリを本拠とする独立企業としてスピンオフ(分離・独立)し、国際的に事業を展開しています。

■ 本件に関するお問い合わせ

ボストン コンサルティング グループ マーケティング 小田切・福井
Tel: 03-6387-7000 / Fax: 03-6387-0333 / Mail: press.relations@bcg.com

ボストン コンサルティング グループ(BCG)

BCGは、ビジネスや社会のリーダーとともに戦略課題の解決や成長機会の実現に取り組んでいます。BCGは1963年に戦略コンサルティングのパイオニアとして創設されました。今日私たちは、クライアントとの緊密な協働を通じてすべてのステークホルダーに利益をもたらすことをめざす変革アプローチにより、組織力の向上、持続的な競争優位性構築、社会への貢献を後押ししています。

BCGのグローバルで多様性に富むチームは、産業や経営トピックに関する深い専門知識と、現状を問い直し企業変革を促進するためのさまざまな洞察を基にクライアントを支援しています。最先端のマネジメントコンサルティング、テクノロジーとデザイン、デジタルベンチャーなどの機能によりソリューションを提供します。経営トップから現場に至るまで、BCGならではの協働を通じ、組織に大きなインパクトを生み出すとともにより良き社会をつくるお手伝いをしています。

日本では、1966年に世界第2の拠点として東京に、2003年に名古屋、2020年に大阪、京都、2022年には福岡にオフィスを設立しました。