2019年の予測を更新 投資家や企業による投資が急速に拡大
【参考資料】
(本資料は、2021年7月21日に米国で発表されたプレスリリースの抄訳です)
経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)は、量子コンピューターをめぐる市場動向に関するレポート「What Happens When “If” Turns to “When” in Quantum Computing?」(以下、レポート)を発表しました。
量子コンピューター領域への投資が加速、これまでの投資総額の約2/3が2018年以降の投資
レポートでは、量子コンピューターの計算速度が従来型コンピューターを圧倒的に上回り、ビジネスや社会の重要な課題を解決するようになる「量子超越性」達成の確度が、この1年で急速に高まっていると言及しています。エクイティ投資家(株式取得・引き受けを伴う投資を行う)は量子コンピューターへの投資額を積極的に拡大しており、今回の調査では、これまで量子コンピューター領域に流入した投資総額の約2/3が2018年以降に実行されたものであることが分かりました(図表)。企業や政府機関による投資も増加しています。
新規の投資の大半は、より低コストでより安定した量子コンピューターハードウェアを開発する、という難題に向けられています。2020年、量子コンピューターの研究開発に流入したエクイティ投資総額6.79億ドルのうち、5.29億ドルがハードウェア開発向けでした。レポートでは、2021年には量子コンピューターへの投資額は最大8億ドルに上り、前年の額を上回るとみています。
企業による投資が拡大 予想より早まった時間軸に備えを
こうした関心の高まりは、技術的進歩への期待と、その結果として性能と利益率が大幅に向上する、という予想によるものです。量子コンピューターは多様な業界で新たな価値を生み出すと推測されます。BCGが2019年に行った調査では、その時間軸について、2050年までに年間4,500億ドル~8,500億ドル(注1) の価値を創出するペースを予測していましたが、今回の調査ではこれを前倒しで達成できると予測を更新しています。
レポートの共著者であるBCGパリ・オフィスのパートナー & ディレクター、ジェーン=フランソワ・ボビエールは、投資の拡大は引き続き加速すると予想しています。「IBMやグーグル、ハネウェル、IonQ、PsiQuantumといったハードウェアの主要企業らによる技術的進歩やロードマップの公表により、今後10年を待たずして、重要なビジネスや社会課題を解決するのに十分な性能の量子コンピューターが開発される、という確実性が高まっています。影響を受ける企業や政府機関は、予想より早まった時間軸に備える必要があります」とコメントしています。
またレポートでは、量子コンピューターが扱うことのできる計算問題として、シミュレーション、最適化、機械学習、暗号技術の4つを挙げています。こうした問題の研究により、金融や製薬、自動車や航空産業に至るまで、多様な業界におけるユースケースを開拓できるとし、計算問題のタイプ/産業ごとの創出価値を推計しています。
共著者の一人であるBCGボストン・オフィスのプリンシパル、マット・ランジオンは、「2年前の市場調査からの決定的な変化として、企業による関心の高まりと投資の拡大が挙げられます。政府機関とエクイティ投資家が大規模な投資を始め、その後に続く最後のドミノが企業だったのです」とコメントしています。「どの業界も、量子コンピューターが、機が熟してから投資を行って参入できるほど単純な産業ではないということに気づいています」
注1:技術が成熟し量子コンピューターが耐障害性を獲得した際、エンドユーザーに生じる価値を純利益ベースで推計。
■ 調査レポート
「What Happens When “If” Turns to “When” in Quantum Computing?」
■ 日本における担当者
高部 陽平 マネージング・ディレクター & パートナー
BCGのデジタル専門組織であるDigitalBCGの日本リーダーの1人。テクノロジーアドバンテッジグループ、金融グループ、およびハイテク・メディア・通信グループのコアメンバー。IBMビジネスコンサルティングサービス株式会社(旧プライスウォーターハウスクーパーズ)を経て現在に至る。
長谷川 晃一 マネージング・ディレクター & パートナー
BCGハイテク・メディア・通信グループ、およびテクノロジーアドバンテッジグループのコアメンバー。デロイトトーマツコンサルティング合同会社を経て現在に至る。
■ 本件に関するお問い合わせ
ボストン コンサルティング グループ マーケティング 直江・福井・天艸
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日本では、1966年に世界第2の拠点として東京に、2003年に名古屋、2020年に大阪、京都、2022年には福岡にオフィスを設立しました。