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DXを通じて将来への準備ができている「未来対応型企業」はわずか6% S&P1200構成企業の約3倍の株主リターンを実現~BCG調査

日本企業は調査対象のうち5%が未来対応型企業

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【参考資料】

(本資料は、2023年4月4日に米国で発表されたプレスリリースの抄訳です)

ボストン発、2023年4月4日 ―― 経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)は、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みを調査したレポート「Build for the Future: The New Blueprint for Corporate Performance」(以下、レポート)を発表しました。対象企業の組織能力を調査し、その成熟度合いによって、DXを通じて将来への準備を整えた「未来対応型企業」など4つの企業群に分類しています。

「将来への準備」に影響を与える組織能力を分析し、調査対象企業を4つの企業群に分類

BCGはDXを実施した日本を含む世界の経営層725人を対象に、これまでのBCGの調査で明らかになった5つの成功の基礎的条件(経営幹部のコミットメント、戦略とアプローチ、ガバナンス、人材、テクノロジー)に関連する50以上の組織能力をどの程度構築しているかを調査し、どの組織能力が将来への準備に最も貢献するのかを分析しました。分析を通じ、将来への準備に大きな影響を与える6つの属性(後述)を明らかにするとともに、これらの属性を獲得し未来対応型企業となるまでの段階に応じて対象企業を「停滞」「発展途上」「スケーラー」「未来対応型」の4つの企業群に分類しました。

将来への準備の程度は、投資家や株主が重視する財務・非財務指標(TSR[注1]、EBIT[注2]成長、顧客満足度、人材確保など)と結び付けることができます(図表1)。

  • 停滞: 調査対象の30%を占める。まだスタート地点に立ち、どのように前進していくのかを決めている段階
  • 発展途上: 調査対象の45%を占める。DXから価値を創出している一方、ソリューションを効果的に拡大するうえで引き続き課題に直面しており、中核事業のバリューチェーンの基本形を修正するにとどまっている
  • スケーラー: 調査対象の19%を占める。AIを含むDXを成功させ、組織内に持続的な変化を生み出している。ソリューションを企業全体に定着させ、イノベーションから成長へと軸足を移すことに注力し、成果を上げている
  • 未来対応型: 調査対象の6%を占める。以下の6つの属性すべてを大規模に拡大展開している。業界におけるディスラプション(創造的破壊)の最先端を行き、不確実性に直面しても回復力を発揮する。テクノロジーによるディスラプションから利益を得るのに最適な立場にある

今回の調査では、「未来対応型企業」がS&P1200構成企業の約3倍の株主リターンを実現していることが明らかになりました。

日本企業については、調査対象23社のうち5%が「未来対応型」、18%が「スケーラー」に分類され、「発展途上」「停滞」はそれぞれ18%、59%でした。成熟度合いがより進んでいる企業(未来対応型、スケーラー)の割合は世界全体と同程度ですが、「停滞」の割合は比較的多いといえます。

成長市場へのアクセスを可能にする、「未来対応型企業」に共通する6つの属性

業種にかかわらず、「未来対応型企業」に共通する6つの属性は以下の通りです。これらの属性が、生成AIをはじめ高成長が期待される新たな市場への進出を可能にすると考えられます。

  • サステナビリティ・社会貢献に関する目標を企業のパーパス(存在意義)に組み込み、それに沿ったリーダーシップ、およびステークホルダー間の信頼と透明性を構築している
  • 世界に通用する人材を惹きつけ、保持・育成する、人材面での明確な優位性がある
  • アジリティ(機敏性)とレジリエンス(回復力)によって、自社がコントロールできず、より不確実性が高い外部要因によるリスクに対抗できるオペレーション・モデルがある
  • イノベーションを促進するカルチャーがある
  • データアクセスを容易にし、ビジネスニーズを容易かつ柔軟にサポートするデータプラットフォームと、柔軟で拡張性の高いテクノロジープラットフォーム、およびアプリケーションがある
  • AIをバリューチェーン全体に組み込むことで、組織に価値をもたらしている

また、「未来対応型」「スケーラー」といった先進的企業は、優位性の確保に重要な組織能力において、次のような点で後進の企業と一線を画しています。

  • AIソリューションについて、パイロット版を小規模に実行するのではなく、拡大展開に進んでいる企業の割合が、先進的企業では5倍(14%に対し72%)
  • 先進的企業は、AIソリューションに2倍の投資を行い、3.5倍の投資対効果を実現している
  • 先進的企業は、ベンチャー企業や新会社を1.6社多く立ち上げており、初期段階のイノベーションをより志向する傾向がある

BCG東京オフィスのマネージング・ディレクター&パートナーで、レポートの共著者であるロマン・ド・ロービエは次のようにコメントしています。「企業は、自社が求めるビジネス上の成果と、構築すべき具体的なユースケースを見極める必要があります。また、ソリューションの適用範囲を徐々に大きくスケールアップできるように技術やデータ基盤のMVP(Minimum Viable Product: 課題解決に必要な最低限の機能要件を満たしたもの)を定義し、その基盤上で柔軟な拡張性を担保する必要があります。先進的企業はすでにこれを実行し、既存の取り組みでも、既存の成果を活用した新たな取り組みでも、継続的な改善・改良のサイクルを実践しています」

レポートでは、BCGの経験則に基づくインサイトから、短期的なパフォーマンス向上と、持続的な優位性に必要な組織能力の構築の両方を実現する要諦を、CEOに向けて実践的に解説しています。

[注1]株主総利回り
[注2]支払金利前税引前利益

■ 調査レポート
Build for the Future: The New Blueprint for Corporate Performance

関連する過去のレポートは以下をご参照ください。
Flipping the Odds of Digital Transformation Success」(2020年10月)
Performance and Innovation Are the Rewards of Digital Transformation」(2021年12月)
頭角を現すデジタル既存企業」(2022年2月)
デジタルネイティブ企業はデジタルの基本を見失っていないか」(2022年11月)

■ 日本における担当者

ロマン・ド・ロービエ マネージング・ディレクター & パートナー
BCG Xアジア・パシフィック地区リーダー兼北東アジア地区の共同リーダー。BCG産業財グループのグローバルリーダーシップチーム、およびコーポレートファイナンス&ストラテジーグループのコアメンバー。
パリ第9大学経済学部卒業。HEC経営大学院修了。米国の投資銀行、BCGパリ・オフィスを経て、2019年1月よりBCG東京オフィス勤務。

安部 聡 マネージング・ディレクター & パートナー
BCG Xにて新規事業立ち上げやコーポレートベンチャリングをリードする。
同志社大学大学院商学研究科修了。株式会社NTTドコモ、画像認識を扱うスタートアップ、株式会社ミクシィ、株式会社ディー・エヌ・エーを経て現在に至る。

■ 本件に関するお問い合わせ

ボストン コンサルティング グループ マーケティング 小川・福井・天艸
Tel: 03-6387-7000 / Fax: 03-6387-0333 / Mail: press.relations@bcg.com

ボストン コンサルティング グループ(BCG)

BCGは、ビジネスや社会のリーダーとともに戦略課題の解決や成長機会の実現に取り組んでいます。BCGは1963年に戦略コンサルティングのパイオニアとして創設されました。今日私たちは、クライアントとの緊密な協働を通じてすべてのステークホルダーに利益をもたらすことをめざす変革アプローチにより、組織力の向上、持続的な競争優位性構築、社会への貢献を後押ししています。

BCGのグローバルで多様性に富むチームは、産業や経営トピックに関する深い専門知識と、現状を問い直し企業変革を促進するためのさまざまな洞察を基にクライアントを支援しています。最先端のマネジメントコンサルティング、テクノロジーとデザイン、デジタルベンチャーなどの機能によりソリューションを提供します。経営トップから現場に至るまで、BCGならではの協働を通じ、組織に大きなインパクトを生み出すとともにより良き社会をつくるお手伝いをしています。

日本では、1966年に世界第2の拠点として東京に、2003年に名古屋、2020年に大阪、京都、2022年には福岡にオフィスを設立しました。