BCG、世界経済フォーラムと共同でレポートを発表
【参考資料】
ジュネーブ発、2020年1月17日 ―― 経営コンサルティングファームのボストン コンサルティンググループ(BCG)は、世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)において、WEFとの共同レポート「The Net-Zero Challenge: Fast-Forward to Decisive Climate Action」(以下、レポート)を発表しました。
2020年は各国首脳が産業革命以前からの世界の気温上昇を2℃未満に抑制するという目標で合意したパリ協定の締結から5周年にあたります。にもかかわらず、温室効果ガスの排出量はここ10年、年平均1.5%増で推移してきました。最悪の事態を回避し、2050年までにネットゼロエミッション(温室効果ガス排出を実質ゼロとする)を達成するためには、2030年にかけて年間5%超の排出量削減を進めていく必要があります。
企業・投資家自身にとってもプラスとなる、気候変動への取り組み加速が求められる
執筆にあたってインタビューした20名以上のCEOと14名の専門家は、倫理的な要請としてのみならず、自社の事業機会拡大のために気候変動へのアクションを加速する必要があると答えました。CDP気候変動質問書に対する約7,000社の回答を分析したところ、温室効果ガスの排出量を開示している企業は少なく、排出量削減目標を設定している企業はさらに少ないことが分かりました。
レポートでは、効率性向上によるコスト削減、地球環境への影響にさらに敏感になっていく消費者ニーズの充足、優秀な人材の獲得などを通じて、気候変動への取り組みを企業の競争優位性の源泉とするにはどうするべきか、事例をまじえて考察しています。執筆者らは、企業は自社のオペレーションとバリューチェーンの炭素強度を改善する取り組みを加速するとともに、気候関連投資のリスクを適切に管理し、脱炭素社会において成長できるよう自社のビジネスモデルを変革する必要があるとしています。
レポートではさらに、投資家が企業の気候変動への取り組み促進にどのように貢献するかについて考察しています。投資リスクの最小化を大原則とする投資家は、ディスクロージャーの透明性向上を促し、脱炭素にむけた計画を支援することなどを通じて大きな役割を果たすと考えられます。
レポートの共著者、BCGクライメートアクション・センターの共同リーダーである、BCGデュッセルドルフ・オフィスのマネージング・ディレクター&パートナー、コーネリウス・ピーパーは「パリ協定に対応するための道すじは、多くの企業にとって非常に大きな、時には根本的な変革をともなうものとなります。イノベーションが必要となりますが、実現できれば多くの企業が低炭素製品・サービスという新しい市場での成長をめざすことができます」と述べています。
政府による効果的な施策実行と個人のリーダーシップが肝要
政策立案者間の交渉では、これまで限られた成果しかあげられていません。121カ国が2050年までにネットゼロエミッションをめざすことを表明していますが、このなかに温室効果ガス排出量の上位5カ国は含まれておらず、121カ国の排出量を合算しても世界の排出量の25%にも届きません。さらに、期待される成果を実現できる、効果的な施策を政府が実行している国は限定的です。炭素価格の設定や特定業界に対する規制、インセンティブの導入など、企業の脱炭素化に必要なコンテクストを構築するためには、より効果的な施策の実行を加速する必要があります。
教養のある有権者・消費者は低炭素社会への移行のカギとなると考えられます。ネットゼロエミッションを実現するために何が必要なのか、あらゆる媒体でより質の高い情報が提供されるとともに、解決策や変革のメリットに焦点を当てたコミュニケーションがなされなければなりません。ビジネスや政治のリーダーとして、または一人の親として、世界の安全を守る責任は私たちそれぞれにあります。
BCGパリ・オフィスのマネージング・ディレクター&シニア・パートナーであり、BCGの気候・環境分野のリーダーを務めるミシェル・フレドーは、「気候変動への対策は、コストなどほかの優先事項とのトレードオフとして認識されることが多いですが、むしろ企業、国、そして個人がより良い、持続可能な世界を構築するなかで優位性を生み出す機会と見なされるべきです」とコメントしています。
執筆者らは、企業、政府、投資家、および個人が2020年に排出量削減をスタートさせるために取り組むべきアクションを挙げてレポートをしめくくっています(表)。
表: 2020年、 20の気候変動アクション: 「20×20」
企業 ① 高い目標を掲げる ② 炭素強度を改善する ③ 自社の気候リスクを評価する ④ ビジネスモデルを変革する ⑤ ステークホルダーを巻き込む | 政府 ⑥ ネットゼロエミッションを目標とする ⑦ ロードマップを定義する ⑧ 効果的な炭素価格を設定する ⑨ 業界ごとに規制を設定する ⑩ ステークホルダーを巻き込む | |
投資家 ⑪ ディスクロージャーの透明性を向上させる ⑫ 投資対象を精査する ⑬ 長期的な脱炭素計画を支援する ⑭ バリュエーションを再考する ⑮ 環境にやさしい投資をコミットする | 個人 ⑯ 社会に影響を与え、主導する ⑰ 自身の家庭でエコを実践する ⑱ 移動の習慣を変える ⑲ より環境にやさしい商品を購入する ⑳ 持続可能な食習慣を守る |
■ 調査レポート
「The Net-Zero Challenge: Fast-Forward to Decisive Climate Action」
■ ダイジェスト版はこちら
英「Why Climate Change Is No Prisoner’s Dilemma」
日「気候変動対策は「囚人のジレンマ」ではない」
■ 日本における担当者
折茂 美保 マネージング・ディレクター & パートナー
BCG社会貢献グループの日本リーダー。東京大学経済学部卒業。同大学院学際情報学府修士。スタンフォード大学経営学修士(MBA)。
服部 奨 マネージング・ディレクター&パートナー
BCG産業財・自動車グループの日本共同リーダー。BCGにおける気候変動アクション調査チームのメンバー。東京大学経済学部卒業。ロンドン大学経営学修士(MBA)。三井不動産株式会社を経て現在に至る。
■ 本件に関するお問い合わせ
ボストン コンサルティング グループ マーケティング 直江・嶋津・福井
Tel: 03-6387-7000 / Fax: 03-6387-0333 / Mail: press.relations@bcg.com
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日本では、1966年に世界第2の拠点として東京に、2003年に名古屋、2020年に大阪、京都、2022年には福岡にオフィスを設立しました。