世界の消費者の80%以上が生成AIを認知、4分の1はすでに使用経験がある~BCG消費者心理調査

職場におけるAI活用に対する働き手の心情についても分析

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【参考資料】

(本資料は、2024年4月24日に米国で発表されたプレスリリースの抄訳です)

ボストン発、2024年4月24日 ―― 経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)は、日本を含む21カ国、2万1,000人の消費者を対象に、AIと生成AIの認知度、使用経験、それに対する心情を調査したレポート「Consumers Know More About AI than Business Leaders Think」(以下、レポート)を発表しました。調査は、顧客の行動・思考に関する独自の情報を提供するBCGの顧客インサイトセンター(CCI)が実施し、職場におけるAI活用をめぐる課題についても分析しています。

消費者の33%が「データセキュリティーとAIの倫理的使用」に不安

調査では、回答者の80%以上が生成AIを認知しており、4分の1はすでに使用経験があることが明らかになりました。35歳未満の人々は35歳以上の人々と比較して、生成AIを認知している割合(86%対80%)、使用経験がある割合(32%対20%)がともに高いことも分かりました。国別にみると、日本では生成AIを認知している割合は86%、使用経験がある割合は19%でした。

AIへの期待が広がる一方、回答者の大多数が、AIが責任ある形で実装されなかった場合に潜むデメリットについて深く認識していることが分かりました。43%の消費者が、AIが多様な用途で活用されることに期待を寄せているのに対し、28%は期待と懸念の双方(葛藤)を示しました(図表1)。また、AIに対する具体的な懸念も挙がっており、33%が「データセキュリティーとAIの倫理的使用」について不安を感じています。生成AIがもたらす環境負荷について懸念している消費者は10%でした。

消費者は、AIの提供する価値は特に、日常生活の質を高める点にあると認識しています。39%が日常生活に与える影響を肯定的に見ており、次いで32%が科学や医療の面でブレークスルーが起きる可能性に強い関心を寄せています。

サポート部門の従業員が最もAIに脅威を感じている

従業員の心情という切り口で見ると、回答者は生成AIをより肯定的に捉えており、70%がその可能性に期待しています(図表2)。60%はAIが学習や教育に役立つと考えており、55%は職場における効率性が向上すると予想しています。

職場におけるAI活用についてどのように感じているかは、職務内容と相関しています。調査によると、AIなどのテクノロジーに自分自身の仕事が置き換えられる恐れがあると感じている人の割合はわずか19%で、回答者の半数以上はその可能性は低いと感じています。しかし、業務プロセスが集中するオフィスのサポート部門(マーケティング・コミュニケーション、財務・経理など)で働く人々は、最もAIの脅威を感じています。対して最も脅威を感じていないのは、人間同士のかかわりが密接な職(家事代行・ベビーシッター、教師、医者・看護師・薬剤師など)に就いている人々でした。

生成AIに期待する消費者の割合が最も高いのは中国 日本は39%

AIに対する心情は国によって大きく異なり、「期待」から「葛藤」、「懸念」に至るまでの幅広い感情が見られます。どの国でも「期待」「葛藤」「懸念」が入り混じっていますが、一部の国では「期待」の割合が高く、比較的受け入れられやすい傾向にあります。調査対象の21カ国中、中国(56%)、インドネシア(49%)、ブラジル(46%)は「期待」の割合が高く、「懸念」の割合が高いのはフランス(50%)、オーストラリア(49%)、英国(43%)でした。日本は「期待」39%、「懸念」30%でした。

「懸念」の割合は、デジタル競争力に優位性がある国で高い傾向にあるようです。そのような国の消費者は、プライバシーや職業への影響といった問題に、より脅威を感じていると考えられます。こうした市場で競う企業の多くは、すでに生成AIをオペレーションに導入しています。デジタル競争力が低い国にとっては、AIが未解決のニーズに対処し、医療や教育などの重要な問題に解決策をもたらす機会と捉えられるため、期待が優勢になっています。

リーダーは「10:20:70」の原則を念頭に

生成AIの普及が進み、生産性向上や売上成長に向けた絶好の機会が生まれています。レポートでは、生成AIの力を活用してビジネスを成功に導くことをめざすリーダーに対し、次のような観点を提示しています。

  • 消費者向けの新たなアプリケーションを開発する際は、透明性の確保に注力し、バランスの取れた商品・サービスにするよう心掛ける。
  • 新たなアイデアや製品を試験的に導入する際は、AI・生成AIに受容的な市場で実施し、プライバシーについては市場に応じたアプローチを検討する。
  • 新たなAIサービスを展開する際には、急速に拡張させる前に再度、顧客の安心を保証する。
  • 企業向けのAIアプリケーションは消費者向けよりも成熟しつつあり、導入が進みやすく、迅速に拡大していく可能性が高い。
  • BCGが提唱する「10:20:70」の原則を念頭に置く。「10:20:70」の原則とは、デジタルに関する取り組みの10%を新たなアルゴリズムやプログラムの構築に、20%をシステムの整備、つまり技術スタックの配備と、正確なデータが適切なシステムで使用されるよう保証することに、70%をチェンジマネジメントと人材に関連するプロセスに費やすという考え方。これには、AIと生成AIに対する各国ごとの微妙な文化的差異を理解することが求められる。

■ 調査レポート

Consumers Know More About AI than Business Leaders Think

■ 日本における担当者

中川 正洋 マネージング・ディレクター & パートナー
日本における生成AIトピックのリーダー。BCG X、BCGパブリックセクターグループ、およびテクノロジー&デジタルアドバンテッジグループのコアメンバー。
早稲田大学理工学部卒業。同大学大学院理工学研究科修了。グローバルコンサルティングファームなどを経て現在に至る。

紀平 啓子 マネージング・ディレクター & パートナー
BCG顧客インサイトセンター(CCI)の日本における担当者。BCG消費財・流通グループ、およびマーケティング・営業・プライシンググループのコアメンバー。
早稲田大学法学部卒業。同大学大学院法学研究科修了。テレビ東京ブロードバンド株式会社、グリー株式会社を経て現在に至る。

■ 本件に関するお問い合わせ

ボストン コンサルティング グループ マーケティング 小川・中林・天艸
Tel: 03-6387-7000 / Fax: 03-6387-0333 / Mail: press.relations@bcg.com

ボストン コンサルティング グループ(BCG)

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日本では、1966年に世界第2の拠点として東京に、2003年に名古屋、2020年に大阪、京都、2022年には福岡にオフィスを設立しました。