消費者の行動変容により、さらなるデジタル化の加速が必要
(本資料は米国で発表された報道資料の抄訳です)
ボストン発、2021年1月26日 ―― 経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)は、「Global Retail Banking 2021: The Front-to-Back Digital Retail Bank」を発表しました。BCGでは、2015年よりリテールバンキング業界についてのレポートを発表しています。
2019年のリテールバンキング業界のレベニュープールは約2.25兆ドルに
2019年のリテールバンキング業界のレベニュープール(市場規模)は約2.25兆ドルと推計されました(図表1)。レポートでは、新型コロナウイルス危機からの回復の軌道について、異なるGDP予測にもとづき3つのシナリオを策定し、シナリオごとに今後の市場規模を予想しました。もっとも迅速に回復するシナリオでも、2022年まではコロナ前の水準に戻らないとみられます。消費者ローンなどの貸出関連がもっとも大きな打撃を受け、電子商取引(EC)の増加によるプラスの影響はあるものの、特に高額商品を中心とした個人消費の落ち込みによって一部は相殺されます。不良債権が業績を圧迫し、低金利が長期的に続くと予想されることから、預金関連の収益にも影響が出るとみています。
コロナ禍により、デジタルチャネルの利用が増加
コロナ禍の影響で、消費者の利用チャネルは支店からデジタルへとシフトしています。昨年5~6月に行った調査によると、主要16市場の消費者の平均13%がコロナ危機下で初めてオンラインバンキングを利用し、12%が初めてモバイルバンキングを利用しました。中国など一部の市場では、この割合が大幅に高くなっています。また、キャッシュレス決済もこの期間に成長し、回答者の20%以上がデジタル決済の利用を増やしたと答えています。
レポートの共著者でBCGフランクフルト・オフィスのパートナー&ディレクター、Thorsten Brackertは「デジタルチャネルへのシフトは、不可逆的なものになる可能性が高いです。調査の結果、消費者のコロナ後におけるモバイルアプリの利用意向は差し引きで19%増、支店の利用意向は26%減でした(図表2)。新規のユーザーも既存のユーザーも、支店の利用ではなくオンラインバンキングを選択するようになるでしょう。デジタル化を意識した消費者は、よりデジタル化が進んだ既存の競合行や、機動力があり革新的な新規参入企業に乗り換えるかもしれません」と述べています。
コスト構造の大幅な変革、デジタル化の加速、オペレーションモデルの変革が必要
多くの消費者がデジタル化を求めるなか、銀行はコスト構造を見直し、主要なバリュー・ストリーム(ある分野のサービス(例:住宅ローン)における、内部プロセスおよび顧客体験を改善するためのすべての活動)の包括的なデジタル化を加速する必要があります。
従来のコスト構造では競争力を維持することができません。グローバルに展開する主力銀行を対象としたBCGの分析によると、調査対象の銀行のうち、効率性で上位25%以内の銀行のオペレーションコストは一般的な銀行よりも平均約40%低く、従業員数も約50%少ないことがわかりました。また、上位の銀行は、一般的な銀行と比較して支店ごとのFTE(フルタイム当量)当たりの口座開設数が 69%多く、顧客 1 人当たりの支店取引件数は80%少なくなっています。このことから、コスト構造の大幅な変革を計画していない銀行は、近い将来、競争上不利な状況に置かれることになります。
銀行は、フロントオフィス業務からバックオフィスまで一貫した形でバリュー・ストリームを定義し、それらを包括的にデジタル化する必要があります。その成功のためには、大胆なビジネス目標、エンドツーエンドのカスタマージャーニーの再考、プロセスの簡素化と自動化、リスク管理の改善、テクノロジーの変革、そして共通の目標を持つ部門横断のチームが不可欠です。
主要なバリュー・ストリームをデジタル化することで、販売、リレーションシップマネジメント(RM)業務、リスク管理やコンプライアンス、ITを含むすべての機能のオペレーションモデルを根本的に変えることになります。銀行が収益、コスト、管理の課題に完全な形で対応するには、フロントオフィスからバックオフィスまで一貫したバリュー・ストリームにもとづき、新たな組織能力と働き方を中心に構築されたオペレーションモデルが必要です。
■ 調査レポート
「Global Retail Banking 2021: The Front-to-Back Digital Retail Bank」
■ 調査概要
グローバルリテールバンキング・レポートでは、各種マクロ経済統計や、銀行の財務情報、各種調査レポート等をベースとした独自のデータベース/モデル(「BCGバンキングプール」)による市場規模の推計をベースに、大手銀行のベンチマーク調査や消費者調査もふまえてリテールバンキング市場/業界の今後を考察しています。市場規模の算出にあたってはGDP換算でグローバル全体の約90%を占める約50カ国のデータを基に世界全体の市場を推計しています。なお、保険・運用商品からの収益は市場規模からは除外されています。
■ 日本における担当者
陳 昭蓉 マネージング・ディレクター & パートナー
BCG金融グループの日本リーダー。保険グループ、コーポレートファイナンス&ストラテジーグループ、マーケティング・営業グループ、およびオペレーショングループのコアメンバー。台湾師範大学数学学科卒業、東京工業大学経営工学専攻博士課程修了(Ph.D)。台湾松下電器、BCGプラハ・オフィスを経て現在に至る。
■ 本件に関するお問い合わせ
ボストン コンサルティング グループ マーケティング 直江・嶋津・福井
Tel: 03-6387-7000 / Fax: 03-6387-0333 / Mail: press.relations@bcg.com
BCGは、ビジネスや社会のリーダーとともに戦略課題の解決や成長機会の実現に取り組んでいます。BCGは1963年に戦略コンサルティングのパイオニアとして創設されました。今日私たちは、クライアントとの緊密な協働を通じてすべてのステークホルダーに利益をもたらすことをめざす変革アプローチにより、組織力の向上、持続的な競争優位性構築、社会への貢献を後押ししています。
BCGのグローバルで多様性に富むチームは、産業や経営トピックに関する深い専門知識と、現状を問い直し企業変革を促進するためのさまざまな洞察を基にクライアントを支援しています。最先端のマネジメントコンサルティング、テクノロジーとデザイン、デジタルベンチャーなどの機能によりソリューションを提供します。経営トップから現場に至るまで、BCGならではの協働を通じ、組織に大きなインパクトを生み出すとともにより良き社会をつくるお手伝いをしています。
日本では、1966年に世界第2の拠点として東京に、2003年に名古屋、2020年に大阪、京都、2022年には福岡にオフィスを設立しました。