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2024年1~9月期の世界M&A市場は回復の兆し、取引総額ベースで前年比10%増、日本は37%増~BCG調査

2025年に向けて回復は加速する見通し、グリーンM&Aやデジタル化目的の取引が拡大

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【参考資料】

(本資料は、2024年10月16日に米国で発表されたプレスリリースの抄訳です)

ボストン発、2024年10月16日 ―― 経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)は、「2024 M&A Report」(以下、レポート)を発表しました。21回目となる今回のM&Aレポートでは、1980年から2024年9月に公表された100万件近くのM&A案件のデータを蓄積したBCGのデータベースに基づいて分析しています。

2024年のM&A市場は混迷しながらも回復傾向だが、地域間でばらつきがある

年初は緩やかな回復で始まり、第2四半期は停滞、そして直近では平均的な水準に戻るなど、2024年のM&A市場は混迷しています。2024年9月までの世界のM&A市場は、取引総額ベースで前年同期比10%増の約1兆6,000億ドル(図表)で、案件数は約22,400件でした。レポートでは、政治やマクロ経済の不安定さなどを警戒し、多くのディールメーカーが慎重な姿勢だと指摘しています。

世界のM&A市場は回復の兆しを見せていますが、地域間でばらつきがありました。北米や欧州が回復傾向だった一方、アジア太平洋地域では、中国が取引総額ベースで前年同期比41%減と大きく落ち込んだ影響で、10年ぶりの低水準となりました。しかし、国別で見ると、マレーシアやインド、シンガポールは堅調に回復し、日本も取引総額ベースで前年同期比37%増と、好調な国もありました。世界全体の傾向を業界別にみると、ヘルスケア、テクノロジー、エネルギーの領域でM&Aが活発化する兆しがみられます。

一方で、メガディール(取引価額100億ドル以上の取引)の件数は減少傾向が続いており、2024年1~9月期に報告されたのは17件のみで、前年同期の20件と比べて減っています。

M&A案件の40%以上が遅延している

米国や欧州など主要市場で規制が強化され、また今年は世界的な選挙イヤーだったことから、政策や規制の動向に対する不透明感が強く、M&Aのスケジュールが長期化しました。BCGの分析では、取引の40%以上が当初予定していたスケジュールでM&Aを完了できず、遅延した案件のうち63%は少なくとも3カ月以上の追加期間を要したことがわかりました。特に大型の案件ほど影響を受けやすい傾向があります。

2025年に向けて、世界のM&A市場の回復は加速する見通し

政治的な見通しが明確になりつつあるとともに、多くの企業が健全な財務状況にあることが、M&A市場を後押しすると考えられます。プライベート・エクイティのドライパウダー(投資先未定の待機資金)も、2024年9月末時点で過去最高の2兆1000億ドルに達しました。これらと金利の低下が相まって、取引の勢いを加速させる可能性があります。長期的に見ると、環境関連取引(グリーンM&A)の推進や、AIを含む最新テクノロジーへのアクセスを得るなどデジタル化を目的とした取引の拡大が、M&A市場の回復を後押しするでしょう。

BCG東京オフィスでM&A分野を主導するマネージング・ディレクター&パートナー、横瀧 崇は、次のようにコメントしています。「日本のM&A市場は世界の市場と異なり、案件数で過去最高水準に到達する見込みです。この背景には、多くの業界で新たな収益源となる事業を開拓するための買収や、海外展開を再び加速させる動きが活発化してきたことがあります。また、世界のM&A市場が活況でないことから、買収競争が通常よりも落ち着いており、日本企業にとってはグローバルの良好なアセットを獲得する絶好の機会です。

さらに、2023年8月に経済産業省が発表したガイドライン『企業買収における行動指針』により、攻めの姿勢でM&Aを仕掛ける企業は、市場競争でリードできるチャンスが増えました。一方、上場企業は常に買収提案を受ける可能性を抱えており、自社を守る態勢も求められています。このような状況で、企業はいかに早くM&Aケイパビリティーを構築するかが、今後の成長を加速するポイントになるでしょう」

■ 調査レポート

「2024 M&A Report」
最新のM&Aレポートを含む全シリーズはこちらからご覧いただけます。

■ 日本における担当者

横瀧 崇  マネージング・ディレクター & パートナー
BCGコーポレートファイナンス&ストラテジーグループの日本リーダー。
早稲田大学第一文学部卒業。ソフトバンク株式会社、グローバルコンサルティングファームを経て現在に至る。約20年にわたりM&A、アライアンス関連の支援に携わってきた。

■ 本件に関するお問い合わせ

ボストン コンサルティング グループ マーケティング 小川・中林・吉田
Tel:03-6387-7000 / Fax: 03-6387-0333 / Mail: press.relations@bcg.com

ボストン コンサルティング グループ(BCG)

BCGは、ビジネスや社会のリーダーとともに戦略課題の解決や成長機会の実現に取り組んでいます。BCGは1963年に戦略コンサルティングのパイオニアとして創設されました。今日私たちは、クライアントとの緊密な協働を通じてすべてのステークホルダーに利益をもたらすことをめざす変革アプローチにより、組織力の向上、持続的な競争優位性構築、社会への貢献を後押ししています。

BCGのグローバルで多様性に富むチームは、産業や経営トピックに関する深い専門知識と、現状を問い直し企業変革を促進するためのさまざまな洞察を基にクライアントを支援しています。最先端のマネジメントコンサルティング、テクノロジーとデザイン、デジタルベンチャーなどの機能によりソリューションを提供します。経営トップから現場に至るまで、BCGならではの協働を通じ、組織に大きなインパクトを生み出すとともにより良き社会をつくるお手伝いをしています。

日本では、1966年に世界第2の拠点として東京に、2003年に名古屋、2020年に大阪、京都、2022年には福岡にオフィスを設立しました。