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9割以上のベンチャーキャピタルがESGの効果を実感~MPower、BCG共同調査

MPowerとBCGが「ESG×VC レポート」を発表 VCの投資判断プロセスにおけるESG要素の検討実態とポイントが明らかに

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ESG重視型グローバルベンチャーキャピタルのMPower Partners Fund(以下、MPower)と経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)は、本日「ESG×VC レポート: VC・スタートアップのESGへの取り組み状況を踏まえたVCにおけるESGの戦略的要諦・アクション」(以下、本レポート)を発表しました。

MPowerとBCGは2022年秋に、ESG(環境・社会・ガバナンス)に対する関心の高まりを受けて、スタートアップの取り組みに関する提言をまとめたレポート「ESG×スタートアップ レポート: 国内スタートアップの現状と、国内外の先進事例に基づいたESGへの取り組み意義/方法」を発表しました。

それから1年半が経った現在、ESG重視の流れは国内外問わず持続しており、スタートアップと共にエコシステムを形成するベンチャーキャピタル(VC)においても、正しく現状を把握し取り組みを加速させる必要性が増しています。その一方で、ESGの効果を認識しつつもどのように取り組むか苦慮しているVCが多いようです。

そこで本レポートではVCのESG実装の一助となるように、国内VC22社へのアンケート調査を基に、「E・S・G各要素の投資判断における検討実態」「ESG検討のボトルネック」「ESGの投資判断・事業運営におけるメリット」等、VCにおけるESGへの取り組みの現状を定量的に整理しました。

さらに国内外で先行するVC4社へのインタビュー、ESGトレンドおよび国内外VC各社に関する各種公開情報、国内スタートアップ50社へのアンケート調査を基に、「VCがESGに取り組む意義」「ESGの戦略的要諦」「具体的アクション」「ケーススタディ」をまとめています。

VCがESGに取り組む効果は実感するも、フレームワークの欠如やリソース不足に苦労

まず調査から見えたのは、ESG要素を投資判断に取り込む効果を実感するVCが多い一方、統一されたフレームワークの欠如やリソース不足が実践のボトルネックになっている現状です。

  • 回答したVCの91%は投資プロセスで何らかのESG要素を考慮。そのうち、95%が投資判断・事業運営への貢献を実感 (図表1)
  • 特に実感する効果は「投資検討先の将来性・成長性のより良い判断」: ESGへの取り組みが自社の投資判断・事業運営に与える効果を最大3つまで選ぶ項目において、80%が「投資検討先の将来性・成長性をより良く判断」を選択
  • 主なボトルネックは「統一されたフレームワークの欠如」と「リソース不足」: ESG要素を投資判断に取り込む上でのボトルネックを最大3つまで選ぶ項目において、「全投資家の中で統一されたフレームワークがない」が35%、「ESGにリソースを配分する余裕がない」が30%という結果に(図表2)

投資検討先に期待するDEIや企業行動規範・情報管理方針の水準は、VC内部基準より寛容

領域ごとの取り組みでは次のような実態が明らかになりました。

環境

  • VCの過半数が投資検討先の温室効果ガス排出量測定・削減を考慮しておらず、考慮するVCは直接排出量のみを重視: 排出量算定は78%が「考慮なし」、22%が「投資検討先の排出分のみ算定」、排出量削減は72%が「考慮なし」を選択
  • 投資検討先の排出削減活動の中では、自社開発製品・サービス起点の取り組みが最も重視されている: 28%が「自社開発製品・サービスが他社の温室効果ガス排出量削減」を重視すると選択

社会

  • 約6割が投資検討先の多様性を考慮しており、主に経営レベルの性別・ジェンダーに注目: 56%が多様性を考慮。多様性を求める役職については56%が「取締役・リーダーシップチーム」、50%が「管理職」と回答。また、求める多様性の種類では56%が「性別・ジェンダー」と回答
  • 約半数は投資検討先のDEI(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)、タレントエンゲージメントの取り組みを考慮しているが、その水準はVCチームの内部基準より寛容: アーリーステージでは50%、レイターステージでは40%がDEIの取り組みを考慮、また全体の61%がタレントエンゲージメントを考慮
  • 大半はプライバシーに関する規制の順守、約半数はデータ管理ポリシーの設定を考慮: 78%が「プライバシーに関する規制の順守」、44%が「データ管理ポリシーの設定」を考慮

ガバナンス

  • アーリーステージを対象にするVCの約半数が、投資検討先の独立取締役の状況を考慮。レイターステージを対象にするVCはこれに加え、約半数が取締役の着任/退任状況を考慮: アーリーステージでは50%が「独立取締役の数・割合」、レイターステージでは60%が「独立取締役の数・割合」「過去2年間の着任/退任状況」を考慮
  • 約半数が投資検討先の企業行動規範と情報管理方針を考慮しているが、その水準はVCチームの内部基準より寛容: 44%が「情報管理方針の設定・体制」、39%が「企業行動規範の設定」を考慮
  • 大半はマネジメント層がESGへの取り組みに関するオーナーシップを持つ: 85%が「GP(ゼネラル・パートナー)・リーダーシップ」を選択

スタートアップに対するVCの期待値引き上げが、国内エコシステムの持続的成長の要

またレポートでは、ESG実装で先行する国内外VC4社へのインタビュー、ESGトレンドおよび国内外VC各社に関する各種公開情報、国内スタートアップ50社へのアンケート調査を基に、「VCがESGに取り組む意義」「ESGの戦略的要諦」「具体的アクション」「ケーススタディ」をまとめています。

VCがESGに取り組む意義を理解するポイント

  • 現状、スタートアップの短中期的な事業運営に向けた規制順守・体制構築はVCの期待値を満たしている。一方、中長期的な持続的成長の担保に向けた多様性確保や環境サステナビリティ対応の取り組みはエコシステム全体で改善の余地がある
  • 直近のトレンドとして、日本国内では大企業を中心にESG情報の開示が要請されている。また海外で求められるESG情報の透明性レベルは国内以上に高い
  • こうした状況を踏まえると、今後は日本国内でも中長期的な持続的成長の担保を念頭に置き、VCの期待値引き上げとスタートアップの取り組み加速化が期待される

ESGの戦略的要諦

  1. 投資理念と整合する「マテリアリティ(優先すべき重要課題)」を策定・実装する
  2. 経営層が取り組みを投資チームと共有し、投資チームのエンゲージメントを高める
  3. 多様性豊かな投資チームを組成する
  4. 分業体制の構築と外部専門家の活用を進める
  5. 投資先を初期段階から啓発する
  6. 投資先の評価・モニタリングにESG指標を活用する
  7. ステークホルダーの目線から情報発信する

各ポイントにおける先進事例や具体的アクションについては、調査レポートをご参照ください。

ESGへの理解を深め、取り組みを進める上で役立つ「2022 Sustainability Report」も公開中

MPowerが昨年発行した「2022 Sustainability Report」では、MPowerのESGに対するアプローチ、ESG各領域におけるマテリアリティごとのアクション、ジェンダー多様性についての調査、前回のBCGとの共同レポートなどの主な成果をまとめています。また後半にはいくつかのポートフォリオ企業におけるESGジャーニーも収めました。

「2022 Sustainability Report」:
日本語版はこちら
英語版はこちら

■ 調査レポート

ESG×VC レポート: VC・スタートアップのESGへの取り組み状況を踏まえたVCにおけるESGの戦略的要諦・アクション

■ レポートに関するお問い合わせ

MPower Partners Fund
佐久間 優奈 プリンシパル
マッキンセー・アンド・カンパニー東京支社にて、企業の中長期戦略及び全社変革プログラムにおける課題解決業務に従事。マッキンゼー以前は、ワシントンD.C.のシンクタンクCenter for Global Development、ボストンのライフサイエンス分野向けコンサルティングファームTrinity Life Sciencesに勤務。VC業界へのESG定着を目指すグローバル非営利団体Venture ESG運営委員。プリンストン大学、ハーバード大学院(MBA)卒業。
yuna@mpower-partners.com 

村上 由美子 ゼネラル・パートナー
OECD(経済協力開発機構)東京センター元所長。岸田内閣「新しい資本主義実現会議」を含む、内閣府、経産省、外務省など多くの審議会で委員を歴任。2016年に上梓した『武器としての人口減社会』はアマゾン経済書部門にてベストセラーとなる。OECD以前は、主にニューヨークおよびロンドンのゴールドマン・サックス証券会社のマネージメント・ディレクターとして約20年間勤務。カンボジアの国連平和維持軍や、東カリブ海地域の経済開発援助にも携わった。上智大学、スタンフォード大学院、ハーバード大学院卒。
yumiko@mpower-partners.com 

ボストン コンサルティング グループ(BCG)
折茂 美保 マネージング・ディレクター & パートナー
BCG社会貢献グループの日本リーダー。気候変動・サステナビリティグループ、パブリックセクターグループのコアメンバー。
東京大学経済学部卒業。同大学院学際情報学府修士。スタンフォード大学経営学修士(MBA)。

栗原 勝芳 マネージング・ディレクター & パートナー
BCGコーポレートファイナンス&ストラテジーグループの日本共同リーダー。金融グループ、および保険グループのコアメンバー。
東京大学経済学部卒業。株式会社大和証券グループ本社、グローバルコンサルティングファームを経て現在に至る。

■ MPower Partners Fundについて

MPower Partners Fundは、日本初のESG重視型のグローバルVCファンドです。スタートアップがESG(Environment、Social、Governance)の視点を戦略に取り入れることで持続的な成長と社会・環境への好影響がもたらされるという信念のもと、テクノロジーで社会的課題の解決に挑む大胆でグローバルな起業家を支援します。創業者をはじめとするチームには豊富な経験と専門知識を有するメンバーが揃っており、日本のベンチャー生態系がよりグローバルかつ多様になり、多くのイノベーションを生み出せるよう働きかけていきます。
https://www.mpower-partners.com

■ 本件に関するお問い合わせ

ボストン コンサルティング グループ マーケティング 小川・天艸
Tel: 03-6387-7000 / Fax: 03-6387-0333 / Mail: press.relations@bcg.com

ボストン コンサルティング グループ(BCG)

BCGは、ビジネスや社会のリーダーとともに戦略課題の解決や成長機会の実現に取り組んでいます。BCGは1963年に戦略コンサルティングのパイオニアとして創設されました。今日私たちは、クライアントとの緊密な協働を通じてすべてのステークホルダーに利益をもたらすことをめざす変革アプローチにより、組織力の向上、持続的な競争優位性構築、社会への貢献を後押ししています。

BCGのグローバルで多様性に富むチームは、産業や経営トピックに関する深い専門知識と、現状を問い直し企業変革を促進するためのさまざまな洞察を基にクライアントを支援しています。最先端のマネジメントコンサルティング、テクノロジーとデザイン、デジタルベンチャーなどの機能によりソリューションを提供します。経営トップから現場に至るまで、BCGならではの協働を通じ、組織に大きなインパクトを生み出すとともにより良き社会をつくるお手伝いをしています。

日本では、1966年に世界第2の拠点として東京に、2003年に名古屋、2020年に大阪、京都、2022年には福岡にオフィスを設立しました。