株主価値向上に向け、アクティビストの手法論の活用を提言
経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)は、日本企業を対象とした過去5年間の価値創造についての調査レポート「アクティビストの手法論の活用による日本企業の価値創造——日本版バリュークリエーターズ・ランキング2022」(以下レポート)を発表しました。レポートでは5年間のTSR(株主総利回り)に基づき、世界の各地域との比較、国内の業種別の比較、個別企業のランキング、という3つの切り口で日本企業の価値創造を分析しました。また、価値創造のヒントを握るカギとしてアクティビストの活動に注目し、その視点や手法論を取り入れるアプローチを提言しています。日本でこの調査を行ったのは昨年に続き2度目です。
日本企業のTSRは海外企業に比べ低調
レポートではTSRを利益成長、株価の評価倍率の増減を示すバリュエーションマルチプルの変化、およびキャッシュフロー利回りという構成要素に分解する枠組みをベースに分析しています。まず、TOPIX(東証株価指数)と米国、欧州、新興国の同等の指標を用いて各地域の企業のTSRの水準を比較したところ、日本企業のTSRは6%と、米国(18%)、欧州(9%)、新興国(11%)を含む対象4地域で最も低水準でした(図表1)。日本では5年前と比べバリュエーションマルチプルが縮小し、「バリュエーションマルチプルの変化」の要素がTSRを1%引き下げる要因となっていることが分かりました。
また、業種別の分析(注1)では「半導体」「ITソリューション」「サービス」「ヘルスケア(製薬を除く)」「商社」が上位にランクインしています。
価値創造に優れた日本企業のランキングの顔ぶれ
時価総額5,000億円以上の大型企業のランキング(図表2)では、昨年に引き続き半導体検査装置のレーザーテックが首位を維持しました(過去5年の年平均TSRは131%)(注2)。コロナ需要や巣ごもり需要の影響で、「ITソリューション」「半導体」「サービス」の企業が多数ランクインしています。6位の東京エレクトロンは、グローバルの大型企業ランキング(時価総額上位200社が対象)でも8位となりました。
企業価値向上にアクティビストの手法論を活用する
日本企業のTSRやバリュエーションマルチプルの水準は海外に比べて低いうえに、収益性や資本効率、バランスシートの最適化、株主還元、ガバナンスなど、多くの点で改善の可能性があり、アクティビストの目には割安で魅力的な市場に見えています。レポートでは、アクティビストを脅威と見るだけでなく、その考え方を客観的に分析し、彼らがどのような要求をしてくるかをシミュレーションする、いわばDIY(Do-It-Yourself)のアクティビズムを取り入れることを提案しています。この取り組みは、アクティビストへの対抗策にもなり得ます。
価値創造に優れた企業のグローバルランキング
BCGは5月6日、企業価値創造に優れた大型企業のグローバルランキングの最新版を発表しています。世界の各地域の33業種、約2,300社を対象とした、2017~2021年の年平均TSR(株主総利回り)に基づく分析や、うち時価総額上位200社を対象としたランキングをご覧になれます。あわせてご参照ください。
(注1)TOPIX 構成銘柄のうち、2021年12月31日時点で時価総額1,000億円以上、浮動株比率20%以上、上場5年以上が経過した企業を分析対象とした
(注2)レーザーテックはテクノロジー・メディア・通信業界のグローバルランキングでも首位を獲得している
■ 調査レポート
「アクティビストの手法論の活用による日本企業の価値創造——日本版バリュークリエーターズ・ランキング2022」
■ 調査概要
TSR(トータル・シェアホルダー・リターン、株主総利回り)とは、企業価値創造の測定指標です。一定期間における配当と株価の値上がりの総利回りで、株主にとっての投資収益性を示します。本調査は日本企業688社を対象に2017~2021年の5年間における年平均TSRを算出・分析しました。BCGでは1999年よりグローバル規模で同種の調査を継続して行っています。調査の詳細や過去のレポート、グローバルランキングについてはこちらをご覧ください。
■ 担当者
加来 一郎 マネージング・ディレクター & シニア・パートナー
BCGプリンシパル・インベスター&プライベート・エクイティグループのアジア・パシフィック地区リーダー。同コーポレートファイナンス&ストラテジーグループなどのコアメンバー。慶應義塾大学卒業。住友商事株式会社、外資系コンサルティングファーム、PEファンドを経て現在に至る。
坂上 隆二 パートナー & アソシエイト・ディレクター
BCGコーポレートファイナンス&ストラテジーグループ、およびプリンシパル・インベスター&プライベート・エクイティグループのコアメンバー。京都大学法学部卒業、パリ第2大学大学院国際関係修士、フランス国立行政学院(ENA)国際行政課程修了。外務省を経て現在に至る。
■ 本件に関するお問い合わせ
ボストン コンサルティング グループ マーケティング 直江・福井・天艸
Tel: 03-6387-7000 / Fax: 03-6387-0333 / Mail: press.relations@bcg.com
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日本では、1966年に世界第2の拠点として東京に、2003年に名古屋、2020年に大阪、京都、2022年には福岡にオフィスを設立しました。