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2023年までの5年間における価値創造に優れた日本企業のランキングを発表~BCG調査

さらなるPBR改善には「事業ポートフォリオの最適化」「戦略的IR」の徹底を

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経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)は、日本企業を対象とした、過去5年間の価値創造についての調査レポート「日本企業のPBR改善に向けた処方箋――日本版 バリュークリエーターズ・ランキング2024」(以下、レポート)を発表しました。

2023年のベストパフォーマーは日本企業

各地域の企業の年平均TSR(株主総利回り)の比較では、日本企業のTSRは2023年単年では25%と、米国の24%を上回り、対象地域中最も高いパフォーマンスを示しました(図表1)。5年間のTSRでも約10%と、米国(14%)に次ぐ水準となり、欧州(7%)、新興国(1%)を上回りました。この分析はTOPIX(東証株価指数)と米国、欧州、新興国の同等の指標を用いて行ったものです。昨年の同じ分析では日本の5年TSRが4地域中最低の1%だったことを考えると、2023年は日本企業の価値創造における分水嶺だったと言えます。

業種別のTSR分析では、足元の生成AI 関連投資の盛り上がりへの期待などから「半導体」が首位に返り咲き、「商社」「通信」がそれに続きました。「商社」が資源関連事業の収益性改善、株主還元の強化などの影響により前年の7位から2位に浮上したのも2023年の大きな変化と言えます。

価値創造に優れた日本企業のランキングの顔ぶれ

時価総額1兆円以上の大型企業を対象としたランキング[注1](図表2)では、半導体検査装置のレーザーテックが4年連続で首位となりました(5年間の年平均TSRは94%)。上位10社中7社[注2]を半導体関連企業が占めたほか、海運三社、多くの大手商社がランクインしました。そのほか、ガバナンス改革の成功事例として投資家の評価が高まる日立製作所や、信越化学などがランクインしています。

さらなるPBR改善に向けた処方箋: 「事業ポートフォリオの最適化」と「戦略的IR」

東証による「PBR (株価純資産倍率) 1倍割れ企業への要請」もあり、2023年は日本企業が企業価値向上やPBRの改善を一層意識した年となりましたが、具体的な動きは自社株買いの実施や政策保有株・不要資産の売却などの財務施策が中心でした。これらは資本収益性を高める上で重要ですが、あくまで単発的な施策です。レポート内の分析では、多くの企業においてPBRの改善はPER(株価収益率)の改善によってドライブされていることが明らかになっており、日本企業の資本収益性の改善は道半ばといえます。レポートでは、企業がPBRの改善、ひいては持続的な企業価値、TSRの成長を実現するための重要なポイントとして、以下の2点を挙げています。

  • 事業ポートフォリオの最適化: なぜ自社がその事業を手掛けるかを、経営者が自問自答し、黒字事業の「切り離し」も選択肢に入れる。売上や利益だけでなく「事業価値」の考え方を導入してポートフォリオの議論に客観性を持たせる。実行にあたっては「成長領域の明確化、腹決め」「リーダーシップと強い実務部隊」「外部の知恵の活用」が必要になる。
  • 戦略的IR: IRは単なる財務報告ではなく、資本の獲得競争の中で、投資家に対し、自社に投資すべき理由を訴えかけるプレゼンテーションである。魅力的な「エクイティストーリー」と経営者のコミットメントが重要だ。

レポートの共著者の一人で、BCG東京オフィスのマネージング・ディレクター&シニア・パートナー加来 一郎は「日本企業が享受してきた株価の上昇は期待先行による『宴』のようなものです。今こそポートフォリオの最適化やIRの改革などに取り組み、実質的な企業価値創造につなげていく必要があります」とコメントしています。

[注1]ランキングの対象は、2021年、2022年は時価総額5,000億円以上の企業、2023年版より時価総額1兆円以上の企業に変更している
[注2]ICパッケージメーカーのイビデンも含む

■ 調査レポート

日本企業のPBR改善に向けた処方箋――日本版 バリュークリエーターズ・ランキング2024

■ 調査概要

TSR(トータル・シェアホルダー・リターン、株主総利回り)とは、企業価値創造の測定指標です。一定期間における配当と株価の値上がりの総利回りで、株主にとっての投資収益性を示します。本調査は日本企業705社を対象に2019~2023年の5年間における年平均TSRを算出・分析しました。BCGでは1999年より25年以上にわたりグローバル規模で同種の調査を継続して行っています。調査の詳細や過去のレポート、グローバルランキングについてはこちらをご覧ください。

■ 担当者

加来 一郎 マネージング・ディレクター & シニア・パートナー
BCGプリンシパル・インベスター&プライベート・エクイティグループのアジア・パシフィック地区リーダー。同コーポレートファイナンス&ストラテジーグループなどのコアメンバー。慶應義塾大学卒業。住友商事株式会社、外資系コンサルティングファーム、PEファンドを経て現在に至る。

坂上 隆二 パートナー & アソシエイト・ディレクター
BCGコーポレートファイナンス&ストラテジーグループ、およびプリンシパル・インベスター&プライベート・エクイティグループのコアメンバー。京都大学法学部卒業、パリ第2大学大学院国際関係修士、フランス国立行政学院(ENA)国際行政課程修了。外務省を経て現在に至る。

吉田 美穂子  アソシエイト・ディレクター
BCGコーポレートファイナンス&ストラテジーグループのコアメンバー。専門領域はシェアホルダーバリュー・アドバイザリー。早稲田大学政治経済学部卒業。ゴールドマン・サックス証券株式会社、SMBC日興証券株式会社、ガバナンス・フォー・オーナーズ・ジャパン株式会社、スパークス・アセット・マネジメント株式会社を経て現在に至る。

■ 本件に関するお問い合わせ

ボストン コンサルティング グループ マーケティング 小川・嶋津
Tel: 03-6387-7000 / Fax: 03-6387-0333 / Mail: press.relations@bcg.com

ボストン コンサルティング グループ(BCG)

BCGは、ビジネスや社会のリーダーとともに戦略課題の解決や成長機会の実現に取り組んでいます。BCGは1963年に戦略コンサルティングのパイオニアとして創設されました。今日私たちは、クライアントとの緊密な協働を通じてすべてのステークホルダーに利益をもたらすことをめざす変革アプローチにより、組織力の向上、持続的な競争優位性構築、社会への貢献を後押ししています。

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日本では、1966年に世界第2の拠点として東京に、2003年に名古屋、2020年に大阪、京都、2022年には福岡にオフィスを設立しました。