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働く人の86%がAI時代の職場環境に備えたアップスキリングが必要と認識。すでにトレーニングを受けた現場従業員の割合は14%にとどまる~BCG調査

AIが仕事に与える影響を楽観視する人の割合は日本で40%、調査対象18カ国中最低

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(本資料は米国で発表された報道資料の抄訳です)

ボストン発、2023年6月7日 ―― 経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)は職場におけるAI活用に関する意識調査「AI at Work:What People Are Saying」(以下、調査)を発表しました。調査は日本を含む世界18カ国、業界を問わず経営幹部から現場従業員まで1万2,800人以上を対象に行われました。

AIの影響を楽観視している人の割合は経営層で62%だが、現場従業員では42%に過ぎない

「AIが仕事に与える影響」について意識調査したところ、回答者の52%が「楽観的」を上位2つの心情の1つに挙げました(図表1)。この割合は、前回調査を実施した2018年から17%ポイント上昇しています。「懸念」の割合は2018年の40%から今回調査では30%と、大幅に減少しました。

組織内の差異に着目すると、経営層は現場従業員よりも生成AIの使用頻度が高く、より楽観的にAIを受け止めており、懸念する人の割合も現場従業員ほど高くないという結果が出ています。経営層の62%がAIによる仕事への影響を楽観視しているのに対し、現場従業員ではその割合は42%に過ぎません(図表2)。生成AIを日常的に使用する人[注1]のうち62%が楽観的であるのに対し、使わない人では楽観視している割合は36%と低いことも分かりました。生成AIツールを日常的に使用する人の割合は経営層では80%に達しているのに対し、現場従業員ではわずか20%にとどまっています。

職場におけるAI活用について、日本では「楽観的」の割合が低く「懸念」の割合が高い

職場におけるAI活用の受け止め方は、国・地域によっても異なります(図表3)。調査を実施した18カ国のうち、「楽観的である」と回答した人の割合が高い国は、ブラジル(71%)、インド(60%)、中東諸国[注2](58%)、低い国は、米国(46%)、オランダ(44%)、日本(40%)でした。懸念を持つ人の割合が高い国は、オランダ(42%)、フランス(41%)、日本(38%)となっています。

また、回答者の36%は「AIによって仕事を失う可能性が高い」と考えています。86%の回答者が、AI時代の職場環境に備えるためにスキルを磨くトレーニングが必要だと考えていますが、これまでにアップスキリングのトレーニングを受けたと回答した現場従業員はわずか14%でした。これに対し、経営層は44%がトレーニングを受けたと回答しています。

自社の責任あるAI活用についても、経営層と現場従業員では大きなギャップがある

調査によると、回答者の79%は「AIに特化した規制が必要だ」と考えており、政府によるテクノロジー規制に対する考え方が大きく変化していることがうかがえます。

多くの企業は、政府による規制の制定を待つのではなく、AIを自社の目的や倫理的価値観に沿った形で管理するため、独自の「責任あるAI」プログラムを導入しています。こうしたプログラムの有効性に関する従業員の見解は、経営層とは大きく異なっています。経営リーダーの68%が自社の責任あるAI活用に自信を持っている一方で、自社が責任あるAI活用に向けた適切な対策を実施していると考えている現場従業員はわずか29%でした。

経営リーダーに推奨される3つの重要な取り組み

調査チームは今回の結果に鑑み、経営リーダーに対して次の3つの重要事項に取り組むことを推奨しています。

  • 「責任あるAI」の試験的取り組みを安全に行えるようにする: 従業員がテクノロジーに対して安心感を持つことは重要なポイントである。従業員がAIや生成AIを日常的に使用するようになれば、その利点だけでなく、限界やリスクも認識できるようになる
  • 継続的なアップスキリングに投資する: テクノロジーの進化のスピードを考慮すると、アップスキリングは1回限りの取り組みでは終わらない。企業は、従業員が仕事の変化に備え、役割が進化していくなかでも成功できるよう、トレーニングに投資する必要がある
  • 「責任あるAI」プログラムの構築を優先する: 従業員は自社がAIや生成AIについて倫理的に取り組んでいるという報告や安心感を求めており、経営層はAI規制の枠組みづくりにかかわりたいと考えている

レポートの共著者で、BCGのデジタル領域に特化した専門家集団「BCG X」においてAI・ソフトウェアのグローバルリーダーを務めるNicolas De Bellefondsは次のようにコメントしています。「生成AIは急速に進化している領域であり、その影響はすでに世界中の職場で実感され始めています。私たちは、ポジティブなインパクトと競争優位性を生みだす次世代AIソリューションの構築を目指すクライアントの取り組みをご支援するため、専門チーム『責任ある生成AIセンター』を立ち上げました。同時に、AI時代の新たな働き方や人材のアップスキリング、チェンジマネジメント、組織カルチャーについても情報を提供していきます」

[注1]使用頻度について「少なくとも週1回」と回答した人
[注2]サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタール、オマーン、クウェート

■ 調査レポート

AI at Work:What People Are Saying

■ 日本における担当者

ロマン・ド・ロービエ マネージング・ディレクター & シニア・パートナー
BCG Xアジア・パシフィック地区リーダー兼北東アジア地区の共同リーダー。BCG産業財グループのグローバルリーダーシップチーム、およびコーポレートファイナンス&ストラテジーグループのコアメンバー。
パリ第9大学経済学部卒業。HEC経営大学院修了。米国の投資銀行、BCGパリ・オフィスを経て、2019年1月よりBCG東京オフィス勤務。

中川 正洋 マネージング・ディレクター & パートナー
BCG X、BCGパブリックセクターグループ、およびテック&デジタルアドバンテッジグループのコアメンバー。
早稲田大学理工学部卒業。同大学大学院理工学研究科修了。グローバルコンサルティングファームなどを経て現在に至る。

■ BCG X(エックス)について

BCG Xは、テクノロジーやデジタルを駆使したビジネス、およびプロダクトビルディングを担う、BCGの専門家集団です。
BCG Xは、BCGの産業や経営機能に対する深い専門知識を活用しつつ、高度な技術的知識と意欲的な起業家精神を結集して、企業の大規模なイノベーションの実現を支援します。80を超える都市に約3,000人のテクノロジスト、データサイエンティスト、エンジニア、デザイナー、プロダクトマネジャー、アントレプレナーを擁し、世界で最も重要な課題と機会に対応するプラットフォームとソフトウェアを構築・設計しています。
私たちのエンドツーエンドのグローバルチームは、既存の産業・機能別プラクティスの枠を超え、クライアントと密接に連携しながら、新しい可能性を切り拓いていきます。私たちは、大胆でディスラプティブ(破壊的)な未来の製品、サービス、ビジネスをともに創り上げていきます。

■ 本件に関するお問い合わせ

ボストン コンサルティング グループ マーケティング 小川・福井・天艸
Tel: 03-6387-7000 / Fax: 03-6387-0333 / Mail: press.relations@bcg.com

ボストン コンサルティング グループ(BCG)

BCGは、ビジネスや社会のリーダーとともに戦略課題の解決や成長機会の実現に取り組んでいます。BCGは1963年に戦略コンサルティングのパイオニアとして創設されました。今日私たちは、クライアントとの緊密な協働を通じてすべてのステークホルダーに利益をもたらすことをめざす変革アプローチにより、組織力の向上、持続的な競争優位性構築、社会への貢献を後押ししています。

BCGのグローバルで多様性に富むチームは、産業や経営トピックに関する深い専門知識と、現状を問い直し企業変革を促進するためのさまざまな洞察を基にクライアントを支援しています。最先端のマネジメントコンサルティング、テクノロジーとデザイン、デジタルベンチャーなどの機能によりソリューションを提供します。経営トップから現場に至るまで、BCGならではの協働を通じ、組織に大きなインパクトを生み出すとともにより良き社会をつくるお手伝いをしています。

日本では、1966年に世界第2の拠点として東京に、2003年に名古屋、2020年に大阪、京都、2022年には福岡にオフィスを設立しました。