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BCG Future Winning Modelシリーズ

日本が2030年とその先に向けて経済成長とウェルビーイングを高いレベルで実現するためには、企業がグローバル競争力を向上させることが欠かせません。しかし、1980年代に「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われた絶頂期以降、日本企業は長きにわたって苦しみ、「失われた30年」から脱しきれず今に至ります。急速に変化する世界情勢の中で、グローバルのリーディング・ポジションをどのように奪回・確立できるのでしょうか。日本企業がめざすべき「Future Winning Model」について、前後編に分けて考察します。

前編: 「日本企業の競争力の現状と成功の必要条件」全文を読む
後編: 「日本企業の特徴と強み、未来に向けた成功要件」全文を読む

後編: 日本企業の特徴と強み、未来に向けた成功要件

Future Winning Modelは、「グローバル標準の成功要諦」「日本企業の特徴の強みへの進化」「未来に向けた成功要件」の3つの柱から成ります(図表1)。

シリーズ前編では、日本企業が全体的に各種財務指標や投資面で欧米企業に劣後していた背景には、「グローバル標準の成功要諦」を十分に押さえられていなかったことがあると明らかにしました。一方で、成功要諦で示した要素を実現し、競争優位を築いているベストプラクティス企業も存在します。後編ではまず、そうした企業がどのように成功をつかんできたか、具体的な事例を基に見ていきます。

事例をひもといていくと、ベストプラクティス企業は要諦を押さえたうえで、日本企業に認められる特徴を独自の強みへと進化させていることがわかりました。これについて、「日本企業の特徴の強みへの進化」で論じます。さらに、長期的なトレンドへも目配りすべく「未来に向けた成功要件」を考察したうえで、Future Winning Modelをいかに実践するか、なすべき4つのアクションを提示します。

日本企業に見られるベストプラクティス

前編で論じた「グローバル標準の成功要諦」は、①グローバルスケールでのイノベーション&マーケティング、②マクロトレンドを踏まえたトランスフォーメーション、③先見性のある経営陣とグローバルに戦えるコア人材の育成・確保、④デジタルも駆使した生産性の抜本的改革、⑤パフォーマンス・自己実現力を高めるウェルビーイングの実現で構成されています。BHIはこれらのレンズを使って、公開情報の分析や企業インタビューを行い、5つの要諦における日本企業のベストプラクティスを調査しました。

第1章: 「日本企業に見られるベストプラクティス」を読む

日本企業の特徴を強みへと進化させる

ベストプラクティス企業の例を見ていくと、単にグローバル標準の成功要諦を押さえるだけでなく、日本的な精神性や文化に根差した特徴をうまく強みへと昇華させていることに気づかされます。ここでは、多くの日本企業に見られる伝統的な特徴の中から、特に「ものづくり/職人技」「おもてなし/顧客第一主義」「調和」「復興」「勤勉」の5つに着目し、グローバルの競合他社を凌駕するレベルに進化させる方法と、その際の留意点について解説します。

第2章: 「日本企業の特徴を強みへと進化させる」を読む

未来に向けた成功要件

「グローバル標準の成功要諦」「日本企業の特徴の強みへの進化」に加えて、未来の経営環境を見据えた現在進行中の事象への目配りが欠かせません。Future Winning Modelを構成する最後の柱として、2030年の勝利に向けた十分条件となりうる5つの「未来に向けた成功要件」を提示します。

  • 生成AI時代のバイオニック・カンパニー化の徹底
  • 女性・高齢者・移民・フリーランス人材の積極活用
  • ESGと戦略、オペレーション一体型の企業価値向上
  • 地政学リスクを踏まえた経営モデル再考
  • 自社にとどまらないエコシステムを活かした成長モデルづくり

第3章: 「未来に向けた成功要件」を読む

Future Winning Modelをいかに実践するか

Future Winning Modelの実現に向けて3つの柱を実践しようとすると、日本企業が陥りがちな罠が待ち受けています。それは「成功の復讐」「日和見の習慣」「中途半端な追随」です。これらの罠の背景には、日本の教育制度、終身雇用制度、人材流動性の低さなど複合的な要因が存在しています。それぞれの罠について解説したうえで、Future Winning Modelの実現に向けて日本企業がとるべき以下のアクションを提示します。

  • クリティカルシンキングと、長期的かつ複眼的思考を徹底させる
  • 適切な前提情報を獲得し、意思決定の質とスピードを向上させる
  • リスク回避的にならず、「Fail fast, fail forward」思考でヒト・モノ・カネを投入する
  • 現場任せではなく、トップが責任をもってチェンジマネジメントを進める

第4章: 「Future Winning Modelをいかに実践するか」を読む

おわりに

「グローバル標準の成功要諦」「日本企業の特徴の強みへの進化」「未来に向けた成功要件」のすべてに、一度に取り組むことは難しいと感じられるかもしれません。まずは、必要条件である5つの成功要諦を押さえることを目標にしつつ、Future Winning Modelの実現に向けた4つのアクションに取り組んでいくことが重要です。2030年とその先に向けて、グローバルの雄に追いつき追い越し企業価値を高めるためにも、日本のビジネスが「ジャパン・アズ・ナンバーワン」を取り戻すためにも、行動を起こす企業が増えていくことを期待しています。


BCGの戦略シンクタンクとして、アイデア創出に有効なテクノロジーを活用し、ビジネス、テクノロジー、科学分野からの新しい価値あるインサイトを探求・開発しています。ビジネスリーダーを巻き込んで、ビジネスの理論と実践の境界線を広げ、ビジネス内外から革新的アイデアを取り入れるための刺激的なディスカッションや実験を行っています。2022年7月に日本における拠点であるBHI Japanを設立しました。