今、日本経済に復活の兆しが見えてきた。
重要なのは、このポジティブな勢いを長期的に持続できるかどうかだ。
「日本経済は良い軌道に乗っており、多くの明るい兆しがある。しかし、困難な課題もある。景気回復を宣言するには、ファンダメンタルズの強化が必要だ」とBHI(BCGヘンダーソン研究所) Japanのリーダーを務める苅田 修は述べている。
現在の日本が外国人投資家にとって魅力的である理由として、次のような点があげられる。
日本は長年、デフレと高齢化に苦しんできた。ある程度の成長はしているものの、中国やインドを含む他のアジアの大国に比べて大幅に後れをとっている。
経済の根本的な弱点として以下のような要素があげられる。
経済の勢いを持続するには、日本は供給を根本的に改善する必要がある。しかし、人口減少が続くことを考えれば、需要を増やすためにさらに大きな努力が求められる。
基礎的な経済の強化に向けて以下にあげるような打ち手が考えられる。
AIの力を活用する。オートメーションとロボティクスは、生産性を向上させる大きな可能性を秘めている。これは半導体のような新しい分野にも、化学やエンジニアリングのような伝統的な製造拠点にも当てはまる。また、生成AIへの大規模な投資もすでに行われており、日本語データで学習させた大規模言語モデルも開発されている。このことは、日本が今後のエンドツーエンドのトランスフォーメーションの一環として、新たな効率性を生み出すAIの可能性を活用するうえで有利に働く。
労働力の可能性を最大限に引き出す。全体的な生産性を向上させるためには、自動化の取り組みによって解放された労働力をリスキリングし、新たな付加価値を生み出す業務に振り向ける必要がある。個々の企業は、共感性や敏捷性など、AIでは容易に再現できない人間の能力を必要とする新しい役割に、社内のリソースをシフトさせることを検討すべきである。業界レベルでは、最も成長率の高い分野にリソースをシフトする必要があるかもしれない。
従業員のエンゲージメントを高める。これは生産性を向上させるもうひとつの重要な打ち手である。日本の労働者の満足度は、アンケート調査に控えめに回答する文化的傾向を考慮しても、他国に比べて著しく低いと苅田は語る。満足度の高い労働者を維持するためには、可能であれば、賃上げに迅速に取り組むことがきわめて重要だ。多くの企業が、従業員のウェルビーイングを積極的に改善し、より強い目的意識を醸成するための措置も講じている。従業員がやる気があり力を与えられていると感じ、潜在能力を最大限に発揮できるよう支援することも重要だ。
労働力の幅を広げる。政府は、女性の就労拡大ですでに一定の成果をあげている。また、高齢労働者の職場残留や職場復帰を奨励する制度もいくつかある。さらに、より多くの外国人人材を惹きつけ、保持するために、企業は研修プログラムや競争力の高い福利厚生を提供するなど、魅力的な職場を確立する必要がある。
純輸出を増やす。将来の成長に向けた最大の機会のひとつは、テクノロジー分野にある。「日本は失われた時間を取り戻したいと考えており、たとえば半導体産業におけるリーディング・プレーヤーとしての地位を再び築くために多額の投資を行っている」と苅田は語る。多くの日本の大企業が、イメージセンサーやカーボンファイバーの製造など、特殊技術ですでに市場リーダーの地位にある。また、設計と製造における優れた職人技と精密さにより、ニッチなカテゴリーで市場を支配している比較的小規模な企業も数多く存在する。
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