データセンター成長の障壁と解決策――電力、サプライチェーン、サステナビリティの視点から

By  Vivian Lee Pattabi Seshadri Clark O’Niell Archit Choudhary Braden Holstege, and  Stefan A. Deutscher
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Key Takeaways

データセンター産業が急速に拡大する一方で、その成長を電力、サプライチェーン、サステナビリティの課題が脅かしている。企業はさまざまな方法でこうした障害を乗り越え、高まり続ける計算処理能力へのニーズに対応することができる。
  • 生成AIは、2023~2028年に計算処理需要が最も急拡大するセグメントになるが、データベース管理やファイル共有・ストレージなど従来型のエンタープライズ用途の処理負荷(ワークロード)が引き続き需要の大半を占める見込みだ。
  • 同期間に増加するデータセンターの電力需要の大部分は、現在のデータセンター市場をリードしている米国で生じると予想されるが、その他の地域でも法規制やクリーンエネルギーへのアクセス状況などによっては大幅な増加が見込まれる。
  • サプライチェーンの課題や地域社会との関わり、気候変動の影響に関して企業、電力事業者、規制当局などを含むエコシステム全体で創造的な協働を実現することで、この産業の最重要課題に対処できる。
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監訳者: 平 慎次 安部 聡 長谷川 晃一

日本の読者の皆様へ

日本政府が脱炭素に向けたグリーントランスフォーメーション(GX)における産業政策の長期戦略を示した「GX2040ビジョン」は、エネルギー安定供給確保、経済成長、脱炭素の同時実現を目指している。これを達成するには、GXと相互に関係するデジタルトランスフォーメーション(DX)もあわせて、両輪で推進することが重要になる。

生成AIの導入をはじめとするDXは、AIエージェントや自動運転モビリティサービスなどの活用を通じて人々の暮らしを快適にしながら、産業構造の変化を導く。その裏では、データセンターの大幅な増設が進み、稼働に伴って爆発的な電力需要が生じる。この需要に対応するためには、エネルギー領域において、再生可能エネルギー、原子力や水素・アンモニアといったクリーンエネルギーを導入することが求められる。

一方で、データセンター事業者は建設地の確保、電力系統の容量確保、再エネの供給、設備のサプライチェーン、建設工事などに携わる人材の確保に関して、課題に直面している。エネルギー業界でも、洋上風力や水素・アンモニアのコスト高騰などによって事業性の担保が難しくなっていることに加え、大規模電源の立地確保やサプライチェーン、技術者の確保といった課題が浮上している。

日本の成長戦略においては「GXとDX」のインフラを構築することが重要だが、この課題解決なくして実現は困難だ。本稿は、テック分野のリーダーである米国において、同様の課題がすでに顕在化していることを示している。日本においても、エネルギー、テック、製造をはじめとする産業界が横断で課題解決に取り組むための一助となれば幸いである。

マネージング・ディレクター&パートナー 平 慎次



計算処理需要は世界的に急増しており、大手データセンター事業者は、このニーズを満たすために2024~2030年の間に1兆8,000億ドルという巨額投資を計画している。この急拡大の背景には、従来型のエンタープライズ向けソフトウェアから 生成AI アプリケーションまで、データ集約型テクノロジーの利用増加がある。

だが、いくつかの重大な障壁が、この産業の発展にブレーキをかける可能性がある。特に喫緊の課題は、発電インフラのボトルネック、サプライチェーンの制約、資源利用に関する地域社会の懸念、データセンターが環境に与える影響の増大だ。本稿では、データセンター事業者とエコシステムのステークホルダーがこうした難題を乗り越え、今後の機会を捉えるための一連の戦略を、実行可能な解決策に焦点を当てて概説する。

急成長するデータセンター産業

データセンター産業が急激に成長しているのは明らかだが、この成長を後押ししている複雑な要因については十分に理解されていない。ボストン コンサルティング グループ(BCG)は、独自の「グローバル・データセンター・モデル」を活用し、データセンター需要の背景、前例のない規模で進行中の設備投資、この新興産業を形作る世界の動向を明らかにしている。 1 1 BCG独自のグローバル・データセンター・モデルでは、処理負荷(ワークロード)の各セグメント(「従来型ビジネスコンピューティング」「生成AI」「その他AI+高性能計算(HPC)」)と関連する成長要因を分析し、計算処理需要を予測。ハードウェアの需要予測(ウエハー製造やGPU需要などの予測)を用いて結果を推定した。本モデルのシナリオベースの考察には、「計算処理需要は制限されない」「ハードウェアの供給に2027年まで制約がある(基本ケース)」「データセンターインフラに制約がある」「生成AIのさまざまな導入パターン」という4つの要素が織り込まれている。特に明記されていない限り、本稿で使用する数値は基本ケースシナリオによるものである。

データセンターの計算処理需要は急増している。私たちは、データセンターの電力需要が2023~2028年の間に、世界全体で年平均約16%増加すると予想している。この成長スピードは2020~2023年より33%速く、2028年までに約130GW(ギガワット)に達するペースだ。 2 2 データセンターの電力需要とは、計算処理(サーバーなど)とそれ以外(冷却など)の両方のインフラに必要な電力を指し、GWで示される。 最近では、生成AIが計算処理需要の拡大要因として注目を集めているが、実情はもっと複雑だ(図表1)。

Breaking Barriers to Data Center Growth | Exhibit 1 | JP

実際、現在はファイルのストレージや共有、トランザクション処理、旧来のビジネスアプリケーションなど、AIを活用しない従来型のエンタープライズ用途の処理負荷(ワークロード)がデータセンターの電力需要の大半を占めている。今後もその傾向は続き、2028年時点での割合は約55%となる見込みだ。エンタープライズ型のデータ量が今後も増加し、企業のデジタル化が進むことを受け、2023~2028年の年平均成長率は7%となると予想される。コスト効率の改善、オペレーションの柔軟性強化、スケーラビリティ(拡張性)向上といった利点をもたらすクラウドサービスの普及拡大が、この成長における重要なイネーブラーだ。

同時に、生成AI関連の計算処理需要は、いま最も急速に成長しているセグメントであり、私たちの予測によると2023~2028年の期間におけるデータセンターの電力需要増加量に占める割合は約60%に達する見込みだ。オープンAIのGPTモデルに代表される大規模な基盤モデルの学習用途の処理負荷は年平均約30%で成長すると予想され、学習済みのモデルを使用してインサイトや予測を生成する推論用途の処理負荷は122%と爆発的に増加するだろう。このように急増はするものの、2028年までに生成AIがデータセンターの電力需要に占める割合は約35%にとどまると予想される。

計算処理需要、ひいてはデータセンター増設の正確な見通しとタイミングは、生成AIの計算量が今後どれほど増加するかによって大きく左右される可能性がある。例えば、モデル構造やハードウェアにおける技術の進歩やイノベーションによって、生成AIの学習に伴う電力需要が減少することも考えられる。反対に、プロンプト(指示)ごとに段階的な処理を必要とする「Chain of Thought(CoT: 思考連鎖)推論」などのアプローチが広く普及した場合には、計算処理需要が急増する可能性がある。

ハイパースケーラーが成長と大規模投資を主導する。私たちの予測では、ハイパースケーラー(アマゾン、メタ、マイクロソフト、グーグルなどの巨大 テック 企業)は、2023~2028年のデータセンター産業の成長の約60%を占め、世界のデータセンターの電力需要に占めるシェアは35%から45%に拡大する見込みだ。同期間に、自社施設内にサーバーなどの機器を設置して運用するオンプレミス(自社運用)のエンタープライズ・データセンターが電力需要に占めるシェアは10%から5%に減少する。その背景には、企業データをクラウドやコロケーションベンダーに移行する動きが続いていることがある。コロケーションベンダーとは、テナントにサーバーや通信機器を設置するスペースを貸し出したり、専用のクラウドサービスを開発したりする事業者で、ハイパースケーラーがこうしたサービスを引き続き活用して増大する計算処理需要を満たすと考えられることから、2028年までのデータセンターの電力需要における残りの50%を占めることが予想される(図表2)。

これだけの成長を実現するには、ハイパースケーラーは2024~2030年の間に米国で1兆8,000億ドル規模のデータセンター関連の設備投資を行う必要があるだろう。 3 3 出所: BCG分析、アナリストレポート、『Datacenter as a Computer: Designing Warehouse-Scale Machine』(第3版)、datacenterHawk、Form 10-K、ガートナー、OEMウェブサイト。 新規参入企業も、急増する需要に応えるため、多額の投資を行うことが予想される。

ハイパースケーラーは施設規模の拡大も主導することになる。米国の平均的なデータセンターは現在40MW(メガワット)規模だが、2028年までに60MW規模に拡大し、200MWを超える規模のデータセンターが約3分の1を占めるようになるだろう。 4 4 出所: BCG分析、datacenterHawk、市場参加者インタビュー。 こうした変化は、例えば冷却効率などのスケールメリットと、生成AIモデルの学習に伴う需要の両方によって生じる。数十億あるいは数兆ものパラメーターを扱う生成AIモデルの学習を効率的に行うには、一元管理されたサーバーで大規模な並列処理と超高速通信を実行する必要があるのだ。

米国がデータセンターの電力需要をけん引

目下のところ米国は、世界に設置されているデータセンターの電力需要の約60%を占めている。現在設置されているデータセンターと、稼働予定のデータセンターに関する公開情報をベースにしたBCGの試算では、2023~2028年に増加するデータセンターの電力需要の大半が米国で発生すると予測している 5 5 この予測は、BCGグローバル・データセンター・モデルの「データセンターインフラは制限される」シナリオに対応している。 (図表3)。

この需要の拡大は、特定の地域電力市場に集中することが見込まれる。私たちの予想では、2028年には米国のデータセンターの約70%が、PJM (PJM Interconnection: バージニア州、オハイオ州など)、MISO (Midcontinent Independent System Operator: イリノイ州とアイオワ州など)、北西部(オレゴン州など)、南東部(ジョージア州など)の管内に拠点を置くこととなる。 6 6 ここに挙げた地域別市場は、米国連邦エネルギー規制委員会が使用する説明に従ったもの。地域送電機関(RTO: PJMなど)と独立系統運用者(ISO: MISOなど)の両方の管轄エリアが含まれる。 データセンター市場における米国の優位性は、主要なハイパースケーラーが米国に本社を置いていること、信頼性の高い エネルギー を確保できること、安定した接続性、カントリーリスク特性が全体的に低いこと、規制面で有利な環境にあることなどの要因に支えられている。気候変動対策に意欲的な目標を掲げるハイパースケーラーにとっては、大量の再生可能エネルギーが入手可能で、電力購入契約(PPA)などの仕組みが広く導入されていることも、米国でのデータセンター開発を後押しする要因となっている。

一方で、現在稼働中および稼働予定のデータセンターを対象にしたBCGの予測では、主に3つの要因により、2023~2028年における電力需要の増加の30%を米国外のデータセンターが占めると見ている。

BCGのモデルは、公開されているデータセンター建設計画の情報のみを織り込んでいる。上記の不確定要素に加え、未公表のデータセンタープロジェクトがある場合、結果的に予想を上回る速度で成長する可能性や、米国外での成長軌道が変わる可能性がある。中国については、データの制約があり今回の分析では焦点を当てていないが、人材、資本、発電リソースが潤沢にあることから、今後もAI分野の主要プレーヤーとして台頭していくだろう。例えば、アリババの大規模言語モデル(LLM)である「Qwen」は、米国による輸出規制の影響で最先端チップの入手が制限されているにもかかわらず、米国のモデルに匹敵する性能を発揮している。 9 9 米国企業および米国の技術を使用する外国企業に適用される現行の米国輸出規則は、最新の米国製半導体や技術を中国企業に販売することを禁止している。生成AIの地政学に関する詳細は、BCGのレポート「 How CEOs Can Navigate the New Geopolitics of GenAI」(2024年12月)を参照のこと。

課題に立ち向かい、データセンターの好機を捉える

世界中の国や企業のリーダーが、AI分野でイノベーションを起こすことを「ミッションクリティカル(必要不可欠)な」優先事項と見なしている。だが、データセンターエコシステム内の企業は、データセンターの新設や大型化を推し進める際に重要な課題に直面している。これらの課題を詳しく調べると、解決に向けた糸口が見えてくる。

電力の確保

データセンターの数や規模の拡大は、電力網の変革を迫るほどの影響を及ぼすだろう。データセンターの電力需要は、世界全体で2028年までに合計で約130GWに達すると予想され、2023~2028年の年平均成長率は16%で、これは2020~2023年の12%を上回る。米国では、データセンターの電力需要が、2023~2030年までの負荷増加量全体の最大60%を占め、交通・運輸機関の電動化など他分野での負荷増加量を上回ると見られる。

こうした状況を受け、大型化が進むデータセンターに必要な電力の確保が重大なボトルネックとして浮上している。これは主に、グリーンフィールド(新規開発)型のデータセンターの開発期間が一般的に2、3年である一方で、電力系統接続の検討やインフラの更新を完了するのに通常4~8年を要するという時間的なずれが原因になっている。 10 10 出所: BCG分析、『Datacenter as a Computer: Designing Warehouse-Scale Machine』(第3版)、市場参加者インタビュー、Interconnection.fyi。グリーンフィールド(新規開発)型のデータセンターの開発期間は、用地取得から施設完成までの所要日数を反映している。電力系統接続の検討とインフラの更新の年数は、米国のISO/RTOおよび非ISO電力事業者の系統連系計画について公開されているデータをベースに、系統連系申請を行った年に基づいて示された完了予定時期を参照している。

この課題を克服するために、データセンター事業者は電力事業者と積極的に連携して、送電インフラ開発を加速させる必要がある。特に重要な対策が以下の2つである。

企業は計算処理需要の急増に対応する計画を立てる中で、新たなアプローチによって、新規の系統接続が必要な電力設備の新設をどの程度抑えられるかを見定めようとしている。だが、ビハインド・ザ・メーター(BTM)電源の開発と継続的なイノベーションという2つのトレンドを掘り下げて見る限り、両者ともすぐに電力供給の仕組みに大きな変化をもたらすわけではなさそうだ(コラム「データセンターの電力需要問題に簡単な解決策はない」をご参照ください)。

データセンターの電力需要問題に簡単な解決策はない
現在データセンター産業が直面している電力問題の議論は必然的に、ビハインド・ザ・メーター(BTM)電源と継続的なハードウェアのイノベーションが近い将来どのような役割を果たすのか、という疑問に行き着く。この2つのトレンドは大きな可能性を秘めているが、最終的な影響は不確かだ。

ビハインド・ザ・メーター(BTM)電源。近年、データセンタープロジェクトにおける送電網のボトルネックを解消し、電力供給までの時間を短縮する手段として、コロケーション型のエネルギー源が注目されている。まだ導入の初期段階であるものの、コロケーション型のガス発電所や水素燃料電池ファーム、バックアップシステムを備えたソーラーパークなどのBTM電源は、データセンターへの電力供給においてより大きな役割を果たすと目されている。こうした電源がどれも必要なのは間違いない。だが、目下注目の的とはいえ、BTMは、2023~2028年にデータセンターで必要になる約70GWもの追加容量をまかなえるものではない。この背景には、大規模実装に伴う重要な問題がいくつかある。

第一に、BTM電源には、定期・不定期の保守管理の必要性や、送電網と関係なく発生する停電のリスクなど、信頼性に関する特有の懸念事項がある。そのため、電力供給に関して極めて高水準の信頼性と冗長性を必要とするデータセンター事業者は、これまで完全独立型のオフグリッドソリューションの検討を避けてきた。系統電力との連携など、信頼性の懸念解消に役立つ可能性のある技術的解決策の導入も考えられるが、こうしたアプローチは開発から実用化まで時間を要するだろう。

第ニに、数メガワット、あるいはギガワット規模で運用されるデータセンターの需要に応えるためにBTM電源を大規模実装するには、技術面で大きなハードルがある。デベロッパーは、オフグリッドの小規模な太陽光発電システムの経験はあっても、天然ガス、太陽光、電池などを含む多様な資源の大規模統合についてノウハウを持っているところはほとんどない。ほぼ瞬時の応答を提供したり広範囲の負荷変動を管理したりするなど、データセンター事業に特有の電力潮流と動的負荷の管理によって、複雑性はさらに増し、プロジェクトリスクも高まる。

第三に、法規制の動きが見通せないことから、BTMソリューションの導入に時間がかかる可能性がある。例えば、送電網の費用配分と安定性への影響については依然として懸念が残っており、最近でも米国連邦エネルギー規制委員会が、データセンター向けにBTM容量を確保するための相互接続契約を拒否している。 11 11 2024年11月1日、サスケハナ原子力発電所に隣接するデータセンターへの電力供給量を拡大するためにPJMが申請した相互接続サービス契約の修正案を米国連邦エネルギー規制委員会が拒否したことを指す。 ER24-2172 | PJM’s Susquehanna Co-Location Proposal

結果として、今後も事業者は、データセンターを送電網に接続する方式を選ぶことが予想される。同時に、こうした送電網接続によるデータセンター運用を促進するためには、大容量の相互接続プロセスに関する規制改革や、全く新しい契約形態の登場によって電力事業者が新たな送電インフラに投資する際のリスクを回避し、投資の迅速化が進むことが期待される。このように変化し続ける状況の下でも、規制対象である電力事業者、特に発電から小売りまでを一貫して管理する垂直統合型の電力事業者の場合は、新しい送電インフラと発電設備に投資することで、データセンター拡大により莫大な価値を得られる立場にいるといえる。

イノベーション。グーグルの量子チップ「Willow」などの画期的な進展で注目を浴びている量子コンピューティングは、計算処理をより効率的に扱えるため、データセンターの電力需要の抑制につながるのではないかという声はよく耳にする。だが実際のところ量子コンピューティングは、データセンターの当面の需要や、少なくとも今後10年間に増え続ける電力需要への現実的な解決策にはならないだろう。量子コンピューティングは推論タスクやエンタープライズ向け処理の多くには適していないと考えられ、大規模言語モデル(LLM)の学習に応用できるかどうかはまだ推測の域を出ていない。AIモデルの学習への応用が技術的には可能だとしても、この分野で大規模に活用できる量子コンピューティングソリューションの実現は何年も先のことになる。

ハードウェアの着実な進展としては、エヌビディアなどのリーダー企業や新興企業が開発するチップが、徐々にではあるが影響力のある進化を遂げており、性能や効率性において重要な改善をもたらす液体冷却など、不可欠な周辺技術でもイノベーションが起きている。ソフトウェアとアルゴリズムのイノベーションも同様の役割を果たす可能性がある。

サプライチェーンの課題

データセンター産業の急成長を受け、建設に必要なリソースを速やかに確保したいデータセンター事業者やデベロッパーにとって、サプライチェーンの管理は最も大きな懸念事項となっている。現在よく知られている課題はチップの確保だが、電力系統や冷却装置、ネットワークインフラ、さらには建設作業員にいたるまで、サプライチェーンのあらゆる要素が混乱を招く要因になりうる。例えば、バックアップ発電機などの重要設備の調達にかかるリードタイムは、数カ月から数年になっている。 12 12 出所: CBRE Research (2024年8月)、ウォール・ストリート・ジャーナル (2024年8月)。

レジリエンス(強靭性)を備えたサプライチェーンを確立し、容量に関するボトルネックを緩和するために、データセンター事業者がとれる実践的な戦略は以下の通りだ。

地域社会との関係構築

データセンターの拡大に伴い、土地や水など周辺地域の資源に与える影響に関して、受け入れ側の地域社会から向けられる目は厳しさを増す。特に、データセンターの拡大に必要な送電網拡充の費用配分ルールや、データセンターの拡大が電力価格に与える影響は、多くの地域社会にとって重要な懸念事項になる。

データセンターエコシステムの主要プレーヤーは、これらの懸念に対して、主に2つの対策を取ることができる。

気候変動の影響

今後5年間で上昇する電力需要は、データセンターブームにも一部後押しされ、電力容量の5年間の伸び率を過去最大規模で引き上げる見通しだ。このような前例のない成長を成し遂げるには、風力や太陽光、蓄電池、従来型の原子力など、多様な電源を大規模に導入していく必要がある。電源拡充の主な要因は、データセンターが継続的で冗長性のある電力供給を必須としていることだ。蓄電池を備えた 再生可能エネルギー は安定した電力供給を可能にするものの、コストや電力容量などの蓄電要件を考慮すると、現時点では再生可能エネルギーよりも化石燃料ベースの発電に経済的優位性がある。そのため、電力事業者は再生可能エネルギーの導入を拡大してはいるが、直近の需要を満たすため、温室効果ガスの排出削減対策が不十分な化石燃料発電も並行して拡大したり、廃止を遅らせたりしているところも多い。

一部のデータセンター事業者は、再生可能エネルギークレジットの調達や再生可能エネルギー発電所との電力購入契約(PPA)締結など、自社事業が気候に与える影響に対処するための重要な基本対策を講じている。それに加えて、データセンター事業者は以下のような踏み込んだ 気候変動対策 に取り組むこともできる。


データセンター産業は極めて重要な岐路に立ち、先行きには不透明感が漂っている。データセンター事業者が電力不足、サプライチェーンの課題、地域社会からの期待の高まりに直面する中で、業界の成長はエコシステム全体がいかにうまく協働するかにかかっている。未来を見据えた戦略とパートナーシップはこの産業のトランスフォーメーションを加速させ、リーダー企業になるか、後れを取るかの分岐点になるだろう。

原典: Breaking Barriers to Data Center Growth

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