『戦略にこそ「戦略」が必要だ』
アダプティブ戦略の基礎となるのは、クラシカル戦略における持続的競争優位性と異なり、「一時的な優位性の連続」という考え方です。予測できず、企業がつくり変えるのも難しい環境では、長期的分析・計画よりも継続的な実験とリアルタイムの調整が重要になります。優位性は一時的なものであるため、目標ではなく手段にフォーカスします。
アダプティブ型戦略が求められる環境での戦略策定・実行には、変化に対する観察・反応というプロセスが必要です。すなわち、変化の兆しをとらえて実験のポートフォリオをマネジメントするのです。アダプティブ型戦略をとる企業は、多くの新しいアプローチを試して、最も有望なものを拡大展開するサイクルを繰り返すことで、継続的にビジネスのしかたを変化させていきます。アダプティブ型の先進企業は、より迅速かつ効果的にこうした適応を繰り返すことで競合企業を引き離しています。
予測しにくく、つくり変えるのも難しい事業環境で、優位性を維持できる期間が短い場合に有効なのが、アダプティブ型戦略です。テクノロジー、顧客ニーズ、競合企業の商品、業界構造において大きな変化が続く状況は、アダプティブ型戦略が必要となる可能性が高いことを示しています。今日、全体のおよそ3分の2の業界で、需要、主要企業の業界内順位、利益が甚だしく変動しており、長期計画が短期間で陳腐化してしまう。こういう認識の下に動くことが、ますます求められるようになっています。