『戦略にこそ「戦略」が必要だ』
シェーピング型戦略をとる企業は、他のプレーヤーとの協働を通じて自社に有利な方向に市場が発展するよう影響力をおよぼし、産業を新たに形作ったり再形成したりします。シェーピング型アプローチでは、多様なエコシステムにおける他プレーヤーとの協業が可能であり、かつ求められます。これによりリスクの分散、組織能力やリソースの補完、数の強みによる市場の早期立ち上げが図れます。産業の進化が初期段階にあること、影響をおよぼさなければならないがコントロールはできない複数のステークホルダーと協業することから、シェーピング型企業は予測可能性が著しく低い状況で事業を運営しなければなりません。
産業の発生段階で業界のルールを定義したり書き換えたりするチャンスがある場合に、シェーピング型戦略が有効です。新興市場、非常に分散した若くダイナミックな産業、新たに破壊的変化が起こった業界は、シェーピング型戦略を適用する機が熟しています。事業機会の規模、成長率、収益性は予測できない一方、参入障壁が低く、規制機関が新商品に不案内なため、自社で機会を形作ることが可能です。カギはタイミングとポジショニングにあります。シェーピング型戦略は、市場の発展の早期段階や既存市場の破壊的変化における変曲点をとらえなければなりません。同時に、十分な影響力をもってエコシステムの他の強力なステークホルダーをひきつける必要があります。
シェーピング型戦略をとる企業は適切なタイミングで、他のステークホルダーを巻き込み、将来ビジョンを共有します。そして、相互作用や協業の基盤となるプラットフォームを構築します。さらに、プラットフォームとエコシステムの柔軟性を維持しつつ、それらを拡大・進化させます。勝利への道は、複数のプレーヤーと共同で市場や産業を開発するところにあります。シェーピング型戦略は、エコシステムの巻き込み、調整・編成、進化という3つの要素を繰り返して発展していきます。
生物学と戦略:マメ
植物の種子を食べ、同時に散布する生物・動物が共に進化するように、自然界には相互に利益をもたらすシェーピング型戦略の例が多く見られます。