『戦略にこそ「戦略」が必要だ』
ビジョナリー型戦略は、有望な機会をとらえ、実現に向けひたすら取り組むことにより、ある程度予測可能な、新たな産業をつくり出す(あるいは再創造する)場合に有効です。これができるのはまれですが、非常に効果的な戦略です。先駆者になることで、競合企業に先駆けて規模を獲得し、業界標準をおさえ、顧客の嗜好に影響をおよぼし、コスト面で有利なポジションを築き、市場全体の方向性を決定づけることができます。ビジョナリー型戦略は起業家がスタートアップ企業で用いる場合が多いですが、大企業にとってもこのアプローチを身につける必要性がますます高まっています。
ビジョナリー型戦略は、新たに産業をつくり出す、あるいは既存の産業を再創造する機会がある場合――他社にはそうは見えなくても、その企業は、将来が予測でき環境をつくり変えることが可能だと考える場合――に用いられる戦略です。こうした状況が生じ得るのは、発生したばかりのメガトレンドに他社に先駆けて着目したときや、テクノロジーの進化により既存の産業を再形成する可能性が出てきたとき、自社の優勢な商品における顧客の未充足ニーズに新市場の可能性が潜んでいるとき、などです。
タイミングがきわめて重要です。ビジョナリー型戦略で成功する企業は、「機会の発生~新しいアイデアの認知・受容~既存企業の反応」における時間的ギャップをうまく活用して、構想をたて、新事業を立ち上げ、徹底的に実行します。まず、メガトレンドや新しいテクノロジー、顧客の未充足ニーズに目をつけて新たな事業機会を構想します。次に、その構想を実現する企業や商品を、他社に先駆けて立ち上げます。そして、ひたすら目標を追求しつつ、予期せぬ障害には柔軟に対応して乗り越えます。